季節は梅雨を迎えていた。
外はザーザーと雨が打ち付けられ、時折雷鳴が聞こえる。
「雨、止まないねぇ」
窓を眺めるが、外は闇。時刻は夜9時を回っていた。
「口説いてるつもりか?」
てっきり1人だと思って呟いたが、後ろから声をかけられ、え?と振り返るとジンがドアに凭れかかって立っていた。
「ジンさん!
口説いてるってなにが?」
「分からねぇならいい」
「えー……なんかごめん」
茜がシュンと肩を落とした瞬間に、外がピカッと光り轟音が鳴り響いた。
そして、辺りが闇に変わる。
「…うぉぉい。びっくりしたぁ。停電だ停電!ヒャッホーイ!」
「お前は馬鹿か」
「停電と言えば、あれの出番!ちょっと待っててー」
茜は何かを持ちに暗闇の中を走り出した。
トントントンと、何やら階段を駆け上がっているようだ。がしかし、ズテッと転ぶ音がした。
「おい、うろちょろするな!」
「えー?大丈夫、大丈夫!一段踏み外しただけー」
二階から大声でのんびり話す茜だが、ジンは気が気ではない。
あいつは階段から落ちるんじゃねぇか、と内心思っていたり。
それからどうやら目的のものを見つけたようで、今度は何事もなかったかのようにジンのもとへ帰って来た。
「あったよー」
「一体何だ」
「ふふふ。1回言ってみたかったんだよねー。
形、真、理、の3つによって剣を、解き、放つ!
トキハナツ〜」
ーカチッー
何かのボタンを押したような音がしたと思ったら、それが赤く光っていた。
そして数度カチカチとボタンを押すと白色に変わった。
「こちらオタクの必須アイテム。キンブレです。明るいでしょ?」
「そうだな。だが、明かりなんざ必要ねぇだろ」
それはどういうこと?という言葉は、声にはならなかった。
一瞬にしてキンブレはジンによって明かりを消され、唇を奪われるのであった。
おわり。