「はぁ……」
「どうした?さっきからため息ばっかりじゃねぇか。
幸せが逃げちまうぜ?」
季節は梅雨。本日も雨。彼女は気づけば何回もため息をついていた。
「だってウォッカさん、雨ですよ?」
「そりゃ梅雨だからな」
ウォッカはグラスにオレンジジュースを注ぎ、テーブルに置いた。彼女はイスに座り出されたそれを飲む。オレンジの酸っぱさが少しだけ気分を晴らしてくれる。でも、やっぱりため息は出る。
「あーあ。…雨は嫌いじゃないですけど、何か元気が出ないというか、なんというか」
「ったくよ。しょうがねぇな。ほら」
ウォッカは両手を広げた。
「え、えと…?」
彼女はどういうことかと、首を傾げるとウォッカの口角が上がる。
「ほら、来いよ」
言葉の意味を理解すると、ほんのり頬を赤らめウォッカの腕の中にすっぽりと収まる。
そして、優しく抱きしめられる。
「ウォッカさん……」
「こうすれば、ちったぁ元気になるだろ?」
「ふふっ…ありがとうございます」
彼女もウォッカの背中に手を回し、きゅと服を掴む。
「まぁ、俺もあんたを充電したかったからな」
「ウォッカさん……。じゃあ私もウォッカさんをもっと充電します!」
ぎゅうっと彼女は抱きしめる力を強くした。
「可愛いことを言ってくれるじゃねぇか」
ウォッカは彼女の肩口に顎をのせて髪を梳くように撫でた。
「ウォッカさんの体温て、すごく癒されます。
あー……。幸せ」
「俺もだ。こんなにも満たされてる。
あんたを離したくねぇ」
「じゃあ、離さないでくださいね」
上目遣いでウォッカを見つめる。
「言ったな?離せと言ってもぜってぇ離さねぇからな。覚悟しとけよ?」
二人は笑い合って、口づけを交わす。
こんな雨の日も悪くないと思えた。
おわり
bkm