彼女の名前は加賀美 茜。
口癖は「やる気でなーい。帰りたーい。働きたくなーい」
今日も今日とて彼女は、休憩室でソファに座り、手足を投げ出し天井を仰いでいた。
「あー。もう任務面倒だなぁ。バックレようか……あ、」
「テメェ、まさかサボる気か?」
視界に入る逆さまのジン。
茜は慌てて姿勢を正そうとするが、急に動いたために首と腰をやった。
「いててて……。やだなージンさん。わたし仕事はきっちりやってるじゃないですか」
「態度に問題有りだ。馬鹿者。お前、幹部の話を断ったらしいじゃねぇか」
「え、そりゃ断るに決まってるじゃないですか。
仕事増えるの嫌ですもん。あと責任を負いたくない」
茜は幹部昇進の話を蹴っていた。その理由は、彼女の口癖が物語っている。
そんなやる気のない茜の態度に、ジンの額に青筋が一本浮かぶ。
「テメェ…」
「あ、任務の時間なんで。失礼しまーす」
茜はそそくさと、休憩室を後にする。
「あいつは一体何だ」
言っている事とやっている事の矛盾。
そんな茜の行動が、妙に気になるジンであった。
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とあるビルの屋上。
茜は任務を遂行する。
「もう帰りたい。あ、ターゲット発見。目標捕捉。……排除。
はい、終了。おつかれっしたー」
ライフルの引き金を引き、ミッションコンプリート。
茜は屋上から地上に戻る。と、すぐそばにジンの愛車が停まっていた。
それを見つけた瞬間に、逆方向へと足が向いていた。
しかし、
「オイ、何処へ行く」
「…なんで、いるんすか」
茜の行動を読んで、先回りしていたジンが彼女の腕を掴む。
「来い」
「いや、もう定時なんで帰ります」
「定時なんざねぇよ」
「ブラックだ!わたしは仕事が終わったのー!帰るーかーえーりーたーいー」
ずるずると引きずられ、あれよあれよとポルシェの中へ。
「あれ、ウォッカさんは?」
いつも運転を任せているウォッカがいない。
茜は不思議に思うが、やっぱり帰りたい衝動が強い。
「別行動だ」
「左様でございますか。ではわたしは帰ります」
「誰が帰すと言った」
それから車は動きだし、車内は終始無言。
ただし茜の心うちは、そうではなかった。
(ジンさんが運転してる……。どこ連れていかれるのわたし……。あーもう帰ったら録画消化したいのに。帰らせてくれよー!仕事終わったじゃんかー。
てか、気まずい…この空気どうにかしてよー)
嗚呼と茜は項垂れた。
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