どうしてこうなった……。
茜は目の前の、冒涜的で名状しがたい代物を見つめて項垂れていた。
今日はジンが帰ってくる日で、茜は彼に手料理を振る舞おうとしたが、この大惨事である。
「……はぁ」
情けなくなって泣きそうになると、玄関のドアが開く音がした。
ジンが帰ってきたのだ。茜はこの惨状を見られる訳にはいかないと思い、急いでジンのもとに駆けつけ彼に抱きついた。
「お、おかえりなさい。ジンさん」
「随分と熱い出迎えじゃねぇか」
「た、たまにはいいでしょ?
寂しかったんだもの」
ぎゅうっと抱きしめてリビングには入れないようにする。
しかし、
「茜、何を隠している」
彼は勘づいたようだ。
だが茜は、必死になる。
「な、なんにも、か、隠してなんか」
「ほう。だったら、傷だらけのこの手はなんだ?説明してみろ」
抱きしめている茜の手をとり、絆創膏だらけの指を睨む。
「え、えと…そのですね」
ジンの有無を言わさない瞳に、茜は訳を話してしまった。するとジンは、肩を震わしてクツクツと笑った。
「わ、笑わないでよ!」
「…知るか…その時のお前を想像したら……フッ…」
ジンは笑いながら茜の頭をポンポンと撫でた。
「うぅ……」
「気にするな。次は俺も手伝ってやる」
「ジンさん…ありがとう」
茜はニッコリと笑い、ジンをまた抱きしめた。
それから二人で仲良く料理を作るのだった。
それはもう仲睦まじい新婚の夫婦のように。
「これからは俺が料理を教えてやるよ。手取り足取り……なぁ、茜?」
おわり
bkm