「ぅわぁぁああああっ……!……っ!?……はぁっ……はぁ…っ、ゆ、夢……だった、の?」
茜が飛び起きると、いつもの見慣れた自分の西日の差す部屋だった。
呼吸は乱れ、口の中はカラカラ。目の奥が熱い。茜は泣いていた。
今のは夢……?
しかし、この橙色の光が一抹の不安を過ぎらせる。
あの夕日の色、暖かさ、そして何よりジンの赤黒い血……鮮明に覚えている。
ベッドから起き上がり、ジンの姿を捜すが、夢のせいで情緒が不安定になる。
「ジンさん…?ねぇ、ジンさん!」
姿が見当たらず茜は焦り、何度も名前を呼ぶ。
「ジンさん、ジンさん!!」
「何だ。騒がしい」
「ジンさんっ…!」
何食わぬ顔で現れたジンに、茜はすぐさま駆けより彼の頬に触れた。
「ジンさんっ……」
その体温に触れた瞬間、溢れ出す涙。
それを止められずに、そのままジンを抱きしめた。
突然のことにジンは珍しく、困惑する。
「どうした?」
「ぅ、く…ふぅっ…」
喋ろうとするも嗚咽だけが漏れ、なかなか言葉に出せずに焦る。
「焦るな。ゆっくりで良い…茜」
背中を優しく摩り、落ち着かせようとするジン。
その甲斐あって落ち着きを戻してきた茜は、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「…ゆ、夢を…見たの」
「夢……?」
コクリと頷き話を続けようとするが、その畏れの気持ちから無意識にジンの服を掴んでいた。
「…ジンさんが……死んじゃう夢…」
再び茜の目から涙が溢れる。
ジンは彼女をしっかり抱きしめて、頭を撫でた。
「随分と悪趣味な夢を見やがって……。いいか、それはただの悪夢だ」
「でも、怖くて、不安で…んっ…!」
ジンは茜の唇を塞ぐと、慈しむように深く甘く口づけをする。
「……っ」
「…んぁ…はっ」
ジンの唇だけで酔わされ、茜の思考は溶かされた。
頬を赤らめ、ジンを見つめ、キスをせがむ。
それが合図となった。
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