不思議な空間を二人で歩いて、たまに不安になったけど、察してくれたのかジンさんはわたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
そして、しばらく歩いているとわたし達は光に包まれて、気付くとどこかの裏路地にいた。
「さて、ジンさん。
ここからは多分あなたの世界です。
ここどこ?」
「俺が知るか」
えぇぇ……。
「とりあえず作戦会議?
今この世界でジンさんはどうなってるんだろうね。
というか、今はいつなんだろう」
うーん、と考えているとジンさんにおでこを小突かれた。
「考えすぎると熱が出るぞ」
「え?酷くない?
でも、ほんとにどうしようか。ポアロに行く?」
「バーボンのところにか?」
あ、ジンさんは名探偵コナンを全巻読みました。ええ。
ついでに、純黒の悪夢とゼロの執行人も一緒に見ちゃった。
「あーでも、ジンさんの状況がどうなってるか分からないと、いくら公安の安室さんと言えど組織にいるからねー。
……工藤邸のセコムに会いに行く?」
「…悪くはねぇな」
一か八か工藤邸に行こうということになったけど、場所が分からない!
とりあえず大通りに出てはみたものの、うーん。
こういう時コナンくんに遭遇できればいいけど、まぁ会ったところで素直に工藤邸へ案内してくれるかは謎。
何せジンさんがいるからな!
でも今のジンさんの格好は、黒ずくめではない。帽子も被ってない。長い銀髪を一つに縛っている。
なんともまぁ、
「…かっこいいよね」
「あ?」
しまった、つい本音が。
「な、なんでもない」
わたしは慌ててジンさんから距離を取ろうと後ずさったが、何かに当たり倒れそうになった。
それをジンさんがわたしを抱き寄せて回避してくれた。
「おい、気を付けろ」
「ご、ごめん」
ちょっと俯いてジンさんに謝った。けど、ジンさんの体温が心地好い。
けど、わたしは一体何にぶつかったのか、振り返ると誰もいないと思ったが少し視線を下げたら、いた。
今わたし達が探そうとしてたコナンくんが。
「ご、ごめんね、ボク。
大丈夫?」
目線を合わせるように少し屈んで、コナンくんに謝る。
「う、うん。大丈夫だよ!ボクもよそ見してたからごめんなさい」
おっとこれは、あの台詞を言っちゃっていいのか??
てか、言いたい!!
「過失の割合は50:50
ってことで、お互い様だね」
ドヤァと心の中で思ってたんだけど、たぶんジンさんは察したのだろう。ため息が聞こえた。
そんなため息でさえセクシーだと思ってしまうわたしは、マジでヤバいと思う。
にやけそうな顔をなんとか引き締めて、コナンくんを見ると、目を見開いて何やら青ざめてる。
「ボク、どうしたの?青い顔して具合でも悪くなっちゃった?」
いや、知ってるけども。ジンさんに気付いたんだね。
「え!?あぁ、いや、大丈夫だよ!
ボク、ちょっと用事思い出して、もう行かなくちゃ!」
「待て」
走りだそうとするコナンくんをジンさんが捕まえた。
ひょいっと片手でコナンくんを持ち上げる。
いや、待てはこっちの台詞だよ。コナンくん今ちょっとぐぇってなってたよ!?
ほら、もうコナンくん顔面蒼白だよ?マジでヤバいって顔してるよ?
「ジンさん、怖すぎ」
しまった、また本音が。
「あ?
こいつがいねぇと困るだろ?」
「いや、そうだけど、そうなんだけどさ、もうちょっと穏便にさー」
「俺に出来ると思うか?」
「……善処してください」
なんてやり取りをしていても、コナンくんの表情は固い。
「あ、ごめんね。
わたし達キミに聞きたいこと、というか案内してもらいたいんだけど、いいかな?
とりあえずジンさん、コナンくん降ろそうか」
「チッ……」
ジンさんは渋々コナンくんを降ろした。
舌打ちしないで。怖いから。
でも好き!
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bkm