わたしから桃と包丁を受け取ると、慣れた手つきで桃を剥いていくジンさん。
「流石というか何というか。刃物の扱い慣れてるね」
「これぐらい出来て当然だ」
「左様でございますか……」
ジンさんの包丁捌きに見惚れていると、ふとジンさんの指を伝う桃の汁に気づく。
なんていうか、率直に言うとエロい。
そして脳裏に浮かぶジンさんとの……。
うはー!思い出したら顔が赤くなっちゃうよ!!
なんて1人で興奮してたら突然……。
「んぐっ!?」
桃を口に突っ込まれました。
ちょっと何するのよ!と怒りが沸き上がったけど、桃の甘さにそんなことはどうでもよくなった。
「ん〜〜!おいひぃ」
「そうか」
ついつい顔が緩んじゃう。
だって美味しいし、何よりジンさんが切ってくれた桃だもん。
ふとジンさんを見ると、桃の汁で濡れた指を舐めてる。
その姿がまぁなんとも艶かしい。
そしてわたしの視線に気づいたのか、ジンさんは横目でわたしを見る。
……心臓が一瞬止まった。
「〜〜〜っ」
「どうした?」
そう声をかけてくるジンさんは確信犯だ!!
だって、口元がそりゃもう愉快って感じで歪んでるもん!
しかも、流し目でわたしを見るなんて!!
どこまでわたしのツボを押さえてるんだこの人は!
「べ、べべつに何でもない!!」
ものすごく動揺してるわたし。
落ち着け、落ち着くんだわたし。
そうだ。
「ジンさんも、桃食べるでしょ?
はい、あーん」
切り分けられた桃を一つ摘まんで、ジンさんの口元へ……と思ったら、思いきり手首を掴まれ、そのままぱくっとわたしの指までも食べられた。
「ちょ、!?」
ご丁寧に指まで舐めて…。
そして最後にちゅっ、とキスされて手を解放された。
「ジンさんっ!!もう!!」
ほっぺたを膨らませてジンさんを睨む。
でもジンさんは楽しそうにクツクツ笑ってる。
「お前は見ていて飽きねぇな」
ポンと頭に手を置かれた。
そしてなでなでされる。
その時の表情が……。
この人は心臓に悪い。
おわり
bkm