お腹空いたはいいけど、この箱がジンさんの目に留まらないようにせねば……。
なんで箱ごとなんですか、有希子さん……。
隠すのも大変じゃないか。
とりあえずわたしの鞄にしまっておこう。
部屋に戻って鞄の奥底に、その箱をしまう。
「これでよし!」
「おい、茜。
さっきから何してる。朝飯出来てるぞ」
「ふぇぇ!?
ジ、ジンさん…」
突然現れたジンさんにびっくりして、飛び上がる。
「何をそんなに驚く。
何か疚しいものでも隠してたか?」
どきっ……。
ジンさんの洞察力なめたらあかん……。
「や、やだなぁ。そ、そんなわけないよー。あははは」
訂正。ジンさんの洞察力以前の問題でした。
わたしに隠し事はできない。めっちゃ動揺しちゃってるもん!
「フン……まぁいい。
さっさと来いよ」
ジンさん明らかに気づいてるよね?わたしが何かを隠したことに。
そのナニかは気づいてないと思うけど……。
うぅ……
とりあえず朝食だ!
「ジ、ジンさん、今日の朝食はなに??」
「あ?
フレンチトーストとフローズンヨーグルトだ」
「え?なにその女子力が高いメニューは」
そんなしゃれおつな朝食は生まれて初めてかもしれぬ……。
「別に普通だろ。
お前が前に見てたDVDの内容思い出しただけだ」
あー、あれね。
声優さんが料理する番組。
わたしの好きな声優さんが出てるから買ったやつ。
ん?
たしかあの時
『あーあんなしゃれおつなメニューの朝食もいいな』
なんてポロっと言った気がする。
「もしかして、わたしの言ったこと覚えててくれたの?」
「……単なる気まぐれだ」
「もー!ジンさん!!
イケメンすぎる!!大好きだぞ」
ぎゅうぅっと抱きついた。
「分かったから離れろ。
飯にするぞ」
ジンさんはわたしの頭をポンポンしながら、やんわりと引き離した。
「はーい!
ふへへ、ジンさんの作ってくれた朝食楽しみ。
エプロン姿のジンさんもなかなか萌えるぜ」
「言ってろ」
フン、と鼻を鳴らしてスタスタと部屋を出ていくジンさん。
「あ、待ってよージンさーん」
わたしは後を追いかけていった。
ジンさんの作ってくれた朝食はとっても美味しくて、優しい味がした。
ねくすとちゃぷたー→
bkm