「それでは行ってきます」
「気をつけていってらっしゃい!」
早朝、沖矢さんは有希子さんと出かけるので、わたしは二人を見送る。
そう今日はベルツリー急行…ミステリートレイン編の日なのです。
「茜ちゃん、今度またゆっくりお話ししましょう?
あなたがどうやってあのジンを骨抜きにしたか知りたいわ〜」
「どうもこうも、ないですけどねー。でもわたしも有希子さんとお話ししたいです!綺麗なお姉さん大好きなんで!」
「まぁ!嬉しい!じゃあ今度お茶しましょうね!」
「はい!喜んで!」
有希子さんからのお茶のお誘い、嬉しすぎる!
わたしは何を隠そう、綺麗なお姉さんと可愛い女の子に目がないのだよ!
ふへへ、また楽しみが出来たなー。
「有希子さん、そろそろ行きますよ」
沖矢さんが門の先で待っている。
いやー今日も沖矢さんはかっこいいな!
なんて思ってたら、
「あ、そうだ!
茜ちゃん、これお守り。
ジンと仲良くね!」
ふふふ、と笑いながら有希子さんはわたしに何かを手渡した。
何だろうと見てみると、
「!?
え、ちょ、ゆ、ゆ、有希子さん!?」
「大丈夫よ!最初は怖いかもしれないけど、ジンに身を委ねちゃいなさい!
きっと優しくしてくれるわよ〜。
それじゃっ、行ってくるわねー」
いや、行ってくるわねーじゃないよ!!
何とんでもない事をさらっと言ってるんですか!?
しかも、なんでこんなもの持ってるの!?
いろいろ深く考えたら負けだけど、いや、さすがにこれ、箱ごと渡すか!?
普通さ、よくあるのは中身一つとかだよね?
え?これを今日中に使いきれと?
まぁ、ジンさんなら可能かもしれんが……。
いや、いやいやいや。
ダメだってぇー。
え、え、えーー………。
有希子さん、天然にも程があります……。
いや、これは天然なのか?
むしろ確信犯なのでは?
わたしは手渡された箱を凝視する。
覚悟を決めるしかない……のか?
この身をジンさんに捧げる覚悟を。
それは嫌じゃないけど、むしろ喜んで捧げたいけど、その一歩をどう踏み出そうか……。
ジンさんは待つとは言ってくれたものの。
うーん……とりあえず朝食だな。
うん。そうしよう。
お腹空いたし。
何やらジンさんが早起きして朝食を作ってくれてるみたいだし。
こうしてミステリートレイン編の1日が始まった。
ねくすとちゃぷたー→
bkm