--side G
俺の肩に頭を預け穏やかな寝息を立てる茜。
だが、俺の服を握りしめる力は強い。
「…チッ。皺になるだろうが」
「相当、離れたくないようだな。お前のシンデレラは」
「こいつはただの眠り姫だ」
赤井秀一は含みを持たせたように笑いやがる。
「チッ、部屋に戻る」
俺はグラスに残った酒を一気に呷り、ついでにこいつが残したバーボンも飲み干す。
それから茜を起こさないよう、横抱き…たしかお姫様抱っこだと前にほざいてたな。
お姫様抱っこをして部屋に運ぶ。
運ぶ最中も起きる気配はない。
規則正しい寝息が聞こえる。
部屋に戻りベッドに寝かせてやるが、相変わらず服を掴んだまま離そうとはしない。
「ん、……ジン、さ…ん……」
「何だ」
「…………」
寝言か。
どうやら夢の中までも俺と一緒にいたいらしい。
悪い気はしねぇが、あくまで夢は夢だ。
俺はここにいる。
一番の問題は、こいつがバーボンに酔ったということだ。
よりによって、あの男だ。
サイドテーブルに置かれた、こいつのお気に入り。
組織の人間でありながら、正体は公安の犬。つまりはNOC。
本名、降谷 零。
無性に腹が立つ。
俺はそれに見せつけるように、茜の唇に吸い付いた。
「んぅ……」
「……茜」
お前とのキスは俺を酔わせる。
貪欲に求めて、口内を貪った。
「…ぅ……んん…?」
「…ふ、…はぁ」
少し夢中になりすぎたか。
名残惜しいが、起こしちゃ可哀想だと思い唇を離した。
そして、サイドテーブルの上のバーボンを睨む。
……俺はガキか。
たかが人形に嫉妬するなんざ、らしくねぇ。
いや、誰かを愛すること自体らしくねぇか。
この俺をここまでさせるとは、大した女だ。
「…茜」
額に口づけをし、俺もベッドの中に入り込む。
未だに俺の服を掴んで離さねぇ。
全く、仕方がねぇやつだ。
俺はお前から離れる気も離す気もない。
壊さねぇように、そっと背中に手を回しお前を抱きしめた。
このぬくもりが酷く愛しい。
甘い夢に落ちるのもたまにはいいだろう。
愛してるぜ、茜。
こうして俺たちの夜が更けていく。
起きたらお目覚めのキスをお前の唇に送ろう。
眠り姫は王子のキスで目覚めるんだろ?
まぁ、俺は王子なんて柄じゃねぇが。
tobecontinued...