--side G
端から真っ直ぐ帰る気なんざ無かった。
だが、一応選択肢を用意してやる。
「このまま大人しく帰るか、逢瀬を楽しむか選べ」
帰るとは言わせねぇぞ。
そんな意を込めて横目でお前を見る。
「デ、デート、してください…」
案の定、耳まで赤く染め上げた表情に思わず口角が上がった。
行く宛もなく愛車を走らせる。
何処か行きたいところはあるかと聞けば
「え?特にないなー。
ジンさんの運転する姿を見れるだけで十分だよ」
なんて言いやがる。
確かにこいつは、自分から何処かに行きたいとは言わねぇ。
確か、この付近に俺のセーフハウスがあったはずだ。
そこに寄るのも悪くねぇ。
色々思案はするものの、結局はこいつが楽しめればそれでいいと思う。
誰かの為を思うなんざ、俺もだいぶ毒気を抜かれたらしい。
「ジンさんどうしたの?」
「……気にするな」
「そう?
あ!海が見える!」
お前は嬉しそうに窓の外を眺める。
行くか?と聞けば答えはNOだった。
「行かないよ。
ベタベタするもん。海は遠くから見るぐらいがちょうどいいんだよ」
お前はそういうやつだったな。
しばらく窓の外を眺めていたが、飽きたのか俺の方を見つめ始めた。
「何だ?」
「いや、ジンさんほんとかっこいいと思ってさ。好きだなぁって」
こいつはいつもそうだ。
心の声が駄々漏れしている。
俺のことになると余計に。
出会った時から変わらねぇな。
だがな、俺はお前が俺を想う以上にお前が好きなんだぜ?
言葉にはしてやらねぇが。
ねくすとちゃぷたー→
bkm