ほっぺにちゅー事件のあと、廊下にいたコナンくんと沖矢さんの姿をした赤井さんを巻き込んで、わたしの荷物整理をした。
ジンさんは、何故か煙草を吸い始めたんですけど。
ちょっと、人の部屋で吸うのやめてくれる?
実はわたし、向こうの世界から持ってきた荷物があるんです。
「ボク気になってたんだけど、茜さんのそのキャリーケース何が入ってるの?」
「え?これ?
ふふふ、それはね
わたしの大事な旦那さまが入ってるの」
「え?」
「どういう事だ?」
何か、コナンくんと赤井さんの視線が鋭く感じるんだけど……。
「え?わたし、何か変なこと言った?」
頭にはてなマークを浮かべてると、ジンさんが煙草を揉み消してため息をついた。
「テメェが妙な言い方をするからだろ」
「だって事実じゃん?
まぁ開ければわかるよ」
開けてみ?
と言ってコナンくんにキャリーケースを渡した。
「え?いいの?」
「いいよ?あ、でもそっと開けて。
結構ぎゅうぎゅうに入れてきたから」
「う、うん」
コナンくんが固唾を呑み込み、キャリーケースを開ける。
「……え?
なにこれ?」
ケースを開けた途端にコナンくんとそれを覗き込んだ赤井さんがぽかーんとする。
「だから言ったじゃん。
旦那さまだって」
「このフィギュアが?」
「そう!全部旦那さま!」
わたしのキャリーケースには、厳選してきたフィギュアと設定資料集諸々が詰まっているのだ。円盤もちょろっとあるが、この世界で再生出来るかは不明。再生できたらいいなー。
「あれ?これって安室さん?」
コナンくんが安室さんのフィギュアを見つけたようだ。
さすがに名探偵コナンの漫画を持ってくる訳にはいかないから、せめて安室さんのフィギュアだけでもと持ってきた。
「そう安室さん。良くできてるでしょ?
まぁまぁ高かったんだぞ。
でもジンさんのフィギュアも欲しかったなー。でも、無いんだよなぁ」
「はっ、そんなもんがなくても本物がここにいるだろ。
それとも、この俺では不満か?」
ジンさんがおもむろに近付いて来た。
わたしはさっきの事件を思い出し、とっさに赤井さんの陰に隠れ、後ろからひょこっと顔を出す。
赤井さんの腕を掴んで。
あ、赤井さんの腕って結構がっしりしてるんだなぁ。
ちょっとキュンとしちゃう。
いやいや、何考えてんだ。
「わたしは、ジンさんがいればしあわせよー」
「ふん。じゃあこれはいらねぇよな?」
「へ?
いや、いる!安室さんフィギュアは高かったの!傷つけないで!」
いくらジンさんが好きだとしても、推しのフィギュアは別問題なのだ。
わたしは、ジンさんから安室さんを奪還すべく手を伸ばすが、ジンさんとの身長差で全く届かない。
「ほら、どうした?返して欲しいんだろ?」
「ぐぬぬ……届かん……安室さんを返してー」
つま先立ちしても全然届かない。
安室さん奪還に必死になりすぎた結果、ジンさんの肩を掴み体を密着させる体勢になっていた。
「随分と積極的じゃねぇか」
「ばっ、違う!
とりあえず安室さんを返せー」
思いきり背伸びをして安室さんに手を伸ばす。
顔を上げると、ジンさんと視線が交わった。
あ、と思った瞬間にはもう唇が重ねられていた。
優しく食まれて、最後にちゅ、とリップ音を立てて唇を離された。
「ほらよ。返してやる」
「…お、おぅ……」
正直に言おう。腰が砕けた。
ジンさんはわたしの体を支えてくれる。
その優しさが堪らんのですよ。
いや、待て腰を砕いたのはジンさんだぞ。
何て考えてたら、赤井さんが咳払いをした。
あ、そういえば……
「二人がお熱いのは分かったが、時と場所を考えてくれないか?」
「……さーせん」
赤井さんは呆れつつ、コナンくんは何か心ここにあらずな様子だった。
何かごめん。
それからまた三人で荷物整理を再開した。
ジンさん?
あぁ、煙草吸ってます。
赤井さんとコナンくんから、何で洋服とか日用品を持ってこなかったのか聞かれたけど、全ては推しの為ってことにしておいた。
テヘペロ☆
ねくすとちゃぷたー→
bkm