お砂糖の瓶に埋めたのは


この人の隣にいる事は特別な事だと思う。けれども決して、その特別の事に対してお返しをする事など、絶対に受け取ってくれないのだ。
さくまは隣にいる葦の様子を見て、グッと唇の端を噛み締める。同時に拳に入れた親指を握り締める。隣にいる葦――実際には人間であるが――便宜上、葦と名付けられただけだった。かのフランスの有名な早熟の天才が遺した一節にあるものを引用しただけに過ぎなかった。まさかそのかの有名なフランスの早熟の天才が晩年そうであったという事を知らず、さくまはそう勝手に横にいる人物、葦に向かってそう名付けた。日頃何かに熟慮し頭を働かせる様子は、まさにそうと形容するが相応しいだろう。偶に、人の話を聞いてない時があるけど。さくまはその時の事を思い出し、グッと唇を噛み締める。
傍らに、流し。水の張った器に泡立て器や大匙小さじ、諸々が器の中に入って汚れを水の中へ浮かせていた。対して葦はと言うと、呑気そうに珈琲の豆を挽く器械のレバーを持って、ガリガリと音を立てながら豆を挽くだけだった。豆を磨り潰す音を聞く。葦は流しに浸けてある調理器具に対して「浸けとけばきっと取れやすくなるでしょ」とだけ残した。
さくまは葦の隣で、その豆を挽く音を聞く。だが、決してその特別の事に対しての返礼は絶対に出来ないのだ。
葦はその返礼を嫌う。
さくまはその事に対して唇も拳も噛み締める。ただ、悔しさだけがそこに勝った。
その返礼を出来る人物に対しての憎悪や嫉妬が襲うよりも前に「なんで」と言う疑問符が悲しみを伴ってさくまに襲い掛かって来た。だが、次第にそれが、日常でその返礼をしようとする度に断りを入れられる事となると、悔しさが勝ってくるようになる。
さくまは人知れずに拳を握り締める。人のよい顔を張り付けては困ったように微笑むだけだ。だが、内心ではとても悔しく、とても悲しい。
さくまは以前、耐え切れなくなって、ある時、葦に尋ねた事を思い出した。その葦への返礼を葦に快く思われる範疇にいる人物に尋ねども、手中に宙を掴ませるかのように何も答えない。アクタベが一切答えぬ事を思い出したさくまは眉間を顰め、歯を噛み締める。結局、その上司に聞いても何も答えてくれぬかったから、さくまは本人に聞く事にした。依頼の中でだった。丁度仕事が終わった時だった。葦が依頼人からその返礼として、小さな菓子の小包みを受け取った所だった。足に群がる悪魔共を、葦が足で蹴り払っている所だった。「ねぇ」とさくまは口を開いてから葦の名前を呼ぶ。「さん」と敬称を付けて話す。だが葦は決してさくまの名を呼ばない。さくまと同じで敬称を付けて相手を呼ぶが、決して名前を呼ばない。苗字である。よくよく考えれば奇妙な事に、自分の上司に対しても苗字と敬称を付けて呼んでいる。付けていない時と言えば、不満や愚痴を相手にぶつけて蔑称を頭部に付ける時だ。さくまは葦が「馬鹿たべ、阿呆たべ!」と言ってはアクタベにその返礼に似たラリアットを喉に喰らっていた事を思い出した。あれも返礼の一つと言うのであろうか。さくまは少し、汗を一筋垂らした。葦は相変わらず珈琲の豆を挽く器械で挽いていた。
ゴリゴリと言う音は室内に満たされる。挽かされる珈琲の豆の匂いも、器械の中にある蟻地獄のようなグルグルと溝のある螺旋の間から香る。その香りが室内に満たされるものの、さくまにとっては嗅ぎ慣れていないものだった。同じカフェインなら紅茶を、珈琲より紅茶の方が美味と感じる性質だった。それが違いと言うものであろうか。さくまは葦との違いに眉間を顰めた。葦は気にせず豆を挽き続ける。手前に瓶、それは葦が挽いた豆の粉を入れるのに使うのであろうか。さくまはティーカップで紅茶のてぃーぱっくを淹れながらそう思った。偶に、取っ手を掴んでは様子を見る。熱いものに弱い舌を持つ葦の為に早めに紅茶を淹れただけの事に過ぎなかった。
葦は自宅から持ってきたと言われる器械を使って豆を挽く。これであの上司に居座れと言う事を言われないかどうかと言う事をぼやく。さくまはその葦の一言に大いに眉間を顰めた。あの葦と上司の仲であるならば、もう既にそれは目に見え透いた結果になるであろう。だが、あの上司といるあの葦と、今自分の横にいる葦は別の物に観たかった。例え、それが本人の一面であろうとも。引き剥がせない、表裏一体のものであろうとも。
さくまは気紛れに、ティーカップからティーパックを三角コーナーに捨てた。

「さくまさん。」
「は、い?」
「あのお菓子食べようよ。ほら、あの依頼人から貰った…!」
「…あぁ」さくまの口からスルリと葦の名前が出る「…さんが勝手に一口食べた…。」
「何を!ただの味見と言ってほしいな!」

フン、と鼻を鳴らすかのように、腰に手を当てて不満だと言うように、葦は軽めに口を叩く。だが、そうであるものの、葦の目は豆を挽く器械に注いでいた。蟻地獄がガリガリと動く。さくまは溜息を吐いた。とりあえずはと思いながら空いた自分のカップを放置して、あの依頼人から貰ったと言われるお菓子を取り出した。同時にその時に言った事も思い出す。さくまは葦の名前を呼んだまま、話を続けていた。

「どうして…そのようなもの、…知ってる人からは貰わなくて、そう言った、その…依頼人の人からは、貰うんですか?」
「ん、え?だって、その場限りの関係じゃないか。」
「…その場限りって?」
「つまりこれで絶交、って事でしょ?そもそも、正直、そうそこまでお世話になる事もあったら、」

あったで問題だし。と葦は貰った小包みを手で剥ぎながらそう言う。さくまは要領が得なかった。え、だから?どう言う事なのだ?さくまの様子に気付いた葦が、こう言葉を続ける。「絶交の証って事だよ。」続け様に言う。「これでもうお相子、関わり合う事もないね、さよなら、って言う証拠。証。」「要するに、契約書みたいなもん」「絶交の。」さくまは二重に否定され、そして強調された意味に気付く。葦は贈り物に対して何かしらの要求の意味があると捉えるのだ。そしてそれが良かれ悪かれ、受け取れば直ぐにそれを飲んだと言う事となるのだ、と分かっていたのだ。さくまは葦のその想像に描いた葦らしくない一面を見て息を飲む。葦はさくまに目をやる。だが、そう言った葦の想像と現実の葦とが一致していない絶望すら、見通していたかのようにさくまを見るだけだった。「ねぇ、さくまさん」と葦は続ける。「現実はそう、甘くはないんだよ。」葦は続け様にそう言った。だが、普段ならば、聞けば「何を言っているんだ、この人。」と少し憤り返して水に流すものの、今はそう真摯にしか受け取れなかった。葦は首を絞められたように声を振り絞って言う。まるでアクタベに首を絞められて必死に口を開いた時に似ていた。あの時は、何故あの人はあぁ言う酷い事をするのだろう、と憎しみと怒りと悲しさで一杯だった。だが、葦はそれすらも振り解き、今の関係をあの上司と築いた。いや、その表現すらも間違いであろう。葦は首を絞められ振り絞った言葉を舌に乗せて吐き出す。さくまは葦の顔を見る。葦の目は濡れていた。そこには、散々と信頼を寄せて来た人物達に裏切られたと言う事実の悲痛の激痛があった。

「やっぱ、紅茶や珈琲だと、和菓子じゃなくて洋菓子の方が合うかな?」
「…え?」
「え、いや…あ、ほら!お菓子の話だよ、お菓子の!」

見れば、葦は豆を挽き終えていた。器械の箱を取り出し、そこに溜まった粉を瓶に詰めていた。サラサラ、と漏斗に粉を落としては瓶に詰めていた。葦の手が瓶の底を叩く。トントン、と横へ傾けられた瓶が漏斗にある粉を全て胃に喰らった。さくまは回想から我に帰る。「あ、あぁ」と呆気に少し取られながらもさくまは口を続ける。「そうですね」と差し障りのない言葉で答える。葦が気を遣ったように話を振った事になど気付かない。葦は話を続けさせる。「そうだよねぇ」苦笑。葦はさくまに苦笑を零した。あぁ、とさくまは一つの腑に落ちる。落ち着いた。葦が自分の反応に対して肯定的な反応を返した事に、ほっと一息を吐いた。

「せめて屑きりかそう言うものでないと……駄目だよねぇ。やっぱ和菓子、羊羹は特に緑茶!だし。せめて麦茶から、茶、茶!」
「…そうですか?」
「ちがうの?」
「あ、いえ…。」

さくまは何時もと違い、真っ直ぐに目を見て率直に言い放つ葦の目にたじろぐ。その葦の目は苦手だった。だが、どうしても葦に一歩踏み込みたかった。どんなに葦が拒否をしようとも、葦が嫌がる素振りを見せようとも。それでも、それでも事務所にいるともと言うのに、他人のままでいるのは嫌だった。ある日悪魔の言った言葉を思い出し、さくまは苛立たしげに自分の足元に擦り寄った悪魔を踏み潰す。丁度、それを言った悪魔であった。さくまは顔に一切その気を出さずとも、悪魔を踏み潰した足にそう出した。葦はそれを日常の光景の一部として肯定的に見て、何食わぬ顔で話を続けた。ガールズトーク、それとも似つかわないが、女同士が話していると言う事に差し違えば、そう当て嵌まるであろう。話している内容が特有の甘さや色を醸し出しているのかと言えば、そうでないと言い切れるが。さくまは話を続ける。葦と名付けられる人物も話を続ける。さくまの専攻は法、葦と名付けられる人物はさくまの口から弾き出される法に関連する話に、興味の赴くままに手を取って吸収した法に関する話を引き出しの中から引き出して、偶に助言や訂正を加える。さくまは訂正を受け入れる。葦は頷く。さくまは訂正を受け入れず、拒否の意を示す。葦は覚えている限りの知識を引き出してさくまと論破をする。さくまは頭を捻らせ、否定的な、その論破の穴を見付け出す。葦は頭を悩ませる。さくまが続け様に訂正を加える。葦は首を傾げる。さくまは腰に手を当て、胸を少し反らしながら「もう」と言った。葦はそのさくまの姿勢が嫌いだった。踏み潰された悪魔が踏まれた頭を押さえながら起き上がる。

「お前等、もっと女らしい会話せえへんか!」
「煩い。」

葦は蹴った。悪魔は飛んだ。
ポンポンとスーパーボールのように飛ぶ悪魔を無視して、葦はキュッと瓶の蓋を閉めた。さくまの横を通り、オメガのマークを描くように流しに移った後、コンコン、と豆を挽く器械に入った粉や豆の皮を出す。口を下に向けられた器械は、レバーをカランコロンと鳴らしながら皮を吐き出す。葦は一通り器械から粉や豆の皮を吐き出させた後、カタン、と客用のお盆を取り出す。何故かシルバーだった。これは、アクタベに一言問い質してみたいものの一つだった。葦はそう考える。葦はその客用のトレーにさくまの淹れたティーパックの紅茶の水面が揺らぐティーカップを置いた。
そして二人分の皿とフォークを置いた後、それらを携えて午後の紅茶を行う応接間へと向かった。「あ」と葦は口を開く。さくまは砂糖の瓶を取り出していた。

「砂糖、いる?出来たら…」
「あ、ありますよ。」
「…」

葦は角砂糖がいいと言おうとしたが、迷って止めた。いざとなれば角砂糖の代わりに何か入れればいいだけの事なのだ。そうだ…蜂蜜があったではないか。葦は口を開いた。

「ねぇ、蜂蜜使っていい?ってか、ある?」
「駄目ですよ!人数が多くなる度に消費も凄くなるんですから…!」
「…あぁ。」

カレーに使う材料となっているのか。とさくまが眼鏡を曇らせて光らせた一言に葦はそう頷く。事務所の冷蔵庫には、毎回さくまが悪魔の生贄の為にカレーを作る時に材料を買いだす事を考えれば、頷く。空である。恐らく、必要最低限のものしか。葦は事務所を離れて暫くも立たない事務所の冷蔵庫を覗いた事はなかった。大抵、何か飲み物を飲もうとしても薬缶に水を入れて沸騰させて冷やした水を飲み、もしくは気の紛れに買いに行く。それか、アクタベがいる時には何か飲もうとした際にアクタベが台所へ行き、何か淹れる事が多かった。それか「珈琲淹れろ」の一言が降った事があった。葦がそれを否定すれば、肉体言語の交えた喧嘩が始まったものだ。
葦は気紛れにそう思い出しながらも、蜂蜜の許可を取り下げられた事に肩を落とす。何だよ、ケチケチすんなよ…。葦は泣きそうな気持ちを堪えながら心の隅でそう愚痴った。さくまは粒子となった砂糖の入った瓶を見せる。それも事務所の備品なのか、最初に事務所を開いたアクタベが買ったものの類であろうか、まぁそれにしてもそうでなくても称賛を送りたいと言うかいや、そうであるともなくても、第一に最初に考えれば、アクタベがシルバーのトレーを適当に買ったのならば、そのまま適当に考えずに同じ系統のシルバーの砂糖入れを買うのではないか。ハッと葦は気付く。あの男は女が買い物に使う時間や労力を人一倍惜しみなく嫌うのであった。
その瓶の中に沈んだスプーンを見ながら葦は百面相をする。さくまはそれが自分が心の底では負の感情が渦巻く人物に向けられた人相とは知らず、笑みを零す。笑みを零すさくまの心情に葦は首を傾げる。何故、そこで笑みが出るのかと言う事が分からなかった。何故ならば、そこでそう出るのは「可笑しい」と言う感情に取ってかわって出て来る笑みだったからだ。だが、今のさくまが出した笑みはそれとは違った。葦は首を傾げる。さくまは砂糖の瓶を片手に提げたまま、葦に尋ねる。

「これじゃ、駄目ですか?」
「……角」
「我慢しましょうね。」

さくまは笑顔で言い伏せた。さくまの一言に凝縮された圧迫に葦は顔を背け、俯き「うぐ」と目に溜まる涙と共に呻き声を上げた。さくまはにっこりとしながらそのトレーに砂糖の瓶を乗せた。この、偽善者!葦は心の中で愚痴ともつかぬ怒声を吐きながら心の中で悔し涙を拭った。さくまは自分の意見を押し通した事に対してにっこりと笑みを浮かべる。葦は悔し紛れに「角砂糖」と逸らした目で訴えた。さくまはにっこりと笑ったまま、粉の方が溶かし易いですよ、と言った。葦は角砂糖には角砂糖のロマンがあってだな…!と言い返そうとしたが、そのロマンを分かってくれなさそうに思えたので止めた。この、理系が!だが理系にもロマンスを分かる輩もいる。葦は悔し涙を更に拭った。

「…ロボット頭。石頭。」
「…なんか分かんないですけど、石頭じゃないですから。ってか、アザゼルさんのほ…あ、豆腐でしたか。」
「うん。」

豆腐並みの耐久度を誇るアザゼルの頭部や体に葦は頷いた。
悪魔使いの素質として、何が欠けているのかと言う事は分からない。人間として何か欠けている所が悪魔使いの素質として第一に挙げられようとも、その欠けた部分は個人差がある。本人であっても分からない。ただ、偶然的にも、悪魔を目にして見えた事から悪魔使いとして道を歩み始めるものもいた。その偶然が、その素質に見初められて道を踏み外した事に対して、葦は嫉妬の炎を持った。ボッと嫉妬の炎を燃やした。だが、素質どうこうに関しては自分の身からは何も言えない事だった。どうせそれがないと言う事は素質がなかったという事に決まっている。葦は自分の脚に纏わりつく悪魔に目を落としながら気分を塞ぎこんだ。さくまが葦の脚に纏わりつく悪魔を払い除ける。そして掃除をするよう言い付ける。

「じゃ、少し休憩を入れましょうか。」
「…うん、そうだね。」

葦は嫉妬の炎を燃やして思い出した事に多少気を塞ぎこみながらも、頷く。苦々しく笑う。だがさくまには葦がその心情や表情へ変わった事に気も留めない。気付く事はない。葦はその反応に、少なからずも胸を撫でおろしていた。胸中に潜む紫色に近い冷たい炎は相変わらず灯っているものの。
さくまと葦は事務所の掃除をする悪魔に気を留める事もなく、黙々と午後の紅茶を始める。午後のお茶会とも、午後の休憩にも形容される。だが、互いに胸に潜む事は他人に知られる事はない。例え、他人と自己は違うものだと切り離しても、どうせ他人に自分の深い所まで知り得られる必要も事もないのだと振り切っても、どうしてもこれだけは出来なかった。さくまは胸中に知り得られたいと言う気持ちを抱きながらも菓子を口に含む。葦は裏切られると知りつつも、それを決して曝け出したく無いと言う感情を抱きながら心の鍵を掛けた。
解錠と施錠、それらの相反する動きがそれぞれの胸中で動いていた。解錠、施錠をする事で情報の開示と感情の表示を行う。それは似通った動きであったが、その解錠と施錠をする動きには大きな隔たりと違いがあった。その隔たりと違いに対しての感情はそれぞれ違っていた。
それらの思考をストップされるかのように、砂糖は水に埋まっただけだった。それを口に含もうとも、紅茶に溶かして飲み下そうとしても、砂糖が脳に行き渡る事を拒否する。糖分がその思考へ費やする事を拒否する。
葦は砂糖を口にする。それらの思考が行き詰って凝縮されて凝固された角砂糖を口にしたいと思う。対してさくまは、それらの思考が解散して拡散して飛散する粉砂糖へと変えて口にしたくなかった。
さくまは粉砂糖をティースプーン一杯程度にしか入れず、口に入れる。その紅茶に含まれた糖分は必要以上の情報を摂取しない、と言う姿勢にも似ていた。対して葦は、角砂糖であれば五、六個入れる所をティーカップの底に砂糖の粒子が溜まる程まで付け足しては飲んでいた。
それらの思いに対する姿勢は違う。それらの感情に向かう姿勢は違う。だが、互いにそれを見たくなくて、解決しようにも出来ない事であろう事だから、平行線をずっと辿っているだけの事に過ぎなかった。
瓶詰めにされた砂糖は一方に減る事を知らない。その思考へ糖分が費やされる事を拒否するからであった。一方通行の平行線をたどる以上、何者もその瓶詰にされた砂糖に含まれる感情や意味合いを解釈し飲み下す事など出来なかった。
最後に葦が感情や意味合いを凝固した溶けかかった砂糖を飲み下し、ティーカップの底を空にした。口を拭う。胸に凭れる甘ったるい味に眉間を少し歪めた後、口直しにと菓子を手にする。あっさりとして、甘味の少ないものであった。糖分が少ないものであった。
葦は情報の閉鎖を求める性質だった。
ティーカップに浮かぶ透明なシナモン色の紅茶はそれすらも拒否し、開示を求める性質だった。
葦は眉間を顰める。そしてそれすらも拒絶するように首を横に振って、珈琲の飲用を求むのであった。



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罪なことに提出
何時もの癖でスラッシュ変換機能で書いちゃった\(^O^)/
すみません、ごめんなさいでした。2012.09.04に訂正。



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