9-2
「ハァ、ハァ、ハァ……ふぅー」
早朝のランニングを終えて、息を整える。
まだ薄暗い中で走るのは少し怖いけど、この静けさは心地良いです。
「朝から精が出ますねぇ」
「あっ、斎藤さんだー」
突然の気配に驚いて後ろを見ると、精神コーチの斎藤さんがいた。
先日会った千歳くんも高かったですが、斎藤さんは更に高いので、見上げるという限度を超えています。
再開を喜ぼうにもまともに話しも出来ないので、まずはしゃがんでもらいました。
「朝のメニューにランニングも入っているのに足らないんですか?」
「だって黒部コーチが私のメニューを半分にしたんです…。いくら性別の差があるからって言われても、なんだかトレーニングした気がしなくて……」
「それはいけませんねぇ、僕の方から黒ベエに相談しておきましょう」
「本当ですか!ありがとうございます!!」
「いえいえ、選手の精神メンタルが僕の仕事ですから」
ふふふと綺麗に笑った斎藤さんに私も和やかな気持ちになる。
でも、ちょっと言いたいことがあります。
というより、最近私はこの言葉をよく言ってる気が…。
「あの…斎藤さん?」
「はい、なんですか?(ニコニコ」
「私、犬じゃないですよ…?」
斎藤さんはにこにこしながら私の頭を撫でている。
徳川くんしかり、斎藤さんしかり、最近ペット扱いが多くなりました。
別に撫でられるのが嫌というわけではないんですが、子供扱いされてるみたいで悔しさ半面少し照れます。
「ハハハッ、ペットだとは思ってませんよ。娘みたいなものですかねぇ」
嬉しいような…嬉しくないような…。
コーチがこんなことでいいんでしょうか?
「それはそうと、斎藤さんがいるってことは、今日は斎藤さんが指導する日なんですね」
「そうなんですよぉ、中学生を相手にするのは初めてなので緊張します。」
「(うん…100%嘘だ。)」
斎藤さんとはお茶飲み友達で仲が良いが、感情を出すのをあまり見たことない。
いつも笑ってて、心の中を見せない人なんです。
「なにをするつもりですか?」
「……内緒です。まぁ、楽しいことではないのは確かですね。」
斎藤さんも実は黒属性なんだろうか?
爽やかに笑う姿が入江先輩を思い出させますJ
とても怪しいですよ斎藤さん。
今回の波乱の犠牲者も中学生らしいです。
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