8-2
「……。」
ここは娯楽スペース。
本来なら遊んだり、休憩したりと和やかな空気が流れるところ。
実際今も練習を終えたメンバーがゆっくりしている。
そんななか私は隅のほうで体育座りをしていた。
「珍しいね、睦月がこんなに静かだなんて」
「昨日のシャッフルマッチが気にくわなかったらしい」
「あ〜拗ねてるんだね」
そんな子供みたいな言い方しないで下さいよ入江先輩。
まぁ、そうなんですけど…。
「睦月、大丈夫か?」
「徳川君…。大丈夫ですけど、心の整理がつかないんです。」
少し唸って膝に顔を埋める。
すると、徳川君は私の隣に座って頭を撫でてくれた。
その手の温かさが心地いい。
「気にするな。コーチたちは何か考えがあってしたことなんだから」
慰めになってるかは分からないですけど、徳川君の言葉にひどく安心した。
…それよりも徳川君。
「頭撫ですぎじゃありません?」
「!あぁ、悪い。なんか睦月見てるとわしゃわしゃしたくなるんだ。」
そう言ってなお頭を撫でてくる徳川君。
その顔はなんだか楽しそうで、止めてほしいとは言えなかった。
私は犬じゃありませんよ〜と心の中で呟いてみる。
「ハハハッ!睦月、犬みたいだね。お手してみる?」
キャー!魔王降臨しちゃったー!!!
入江先輩はとてもいい笑顔で私に近づいてくる。
その笑顔がとても怖いです。
「入江さん、睦月が怖がってます。」
「うん、その顔そそるよね♪」
庇ってくれた徳川君だけど、入江先輩には効かなかったようだ。
「入江先輩のドS!魔王!くっ来るなー!!」
「へぇ…僕にそんなこと言っていいと思ってんの?(ゴゴゴゴゴ」
「イヤーーーーー!!!」
娯楽スペースを逃げ回る私とそれを追いかけてくる入江先輩。
もう頭の中には悩んでいたものが欠片もなくて、これは彼らなりに慰めてくれたかなぁと後で思った。
それでも入江先輩は怖かったです…。
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