3-2
「ただし、監督から伝言があります。」
そう黒部コーチが言って落とされた250個のボール。
ここで私の不幸スキルが発動されたのか。1つのボールが私の頭上に落ちてきた。
いや、これは逆に幸運と言ってもいいでしょうね…頭痛いけど…。
なんとも楽な方法でボールが手に入ってしまいました。
私が落ちたボールを追って拾うと、いつの間にかコートのは不穏な空気が…。
目を凝らして見てみると、どうやら中学生がボールを独占しちゃってるみたいです。
それを佐々木?佐川?…とにかく、名前も覚えてない程下のコートにいる人たちが気に入らなようで、中学生に絡んでいた。
「取れないほうが悪いと思いますけどねぇ…。」
私はコートから少し離れたところで傍観することにした。
巻き込まれるのは嫌ですし、何より一触触発の雰囲気に入れそうにない。
コートはそのまま試合をする流れに…。
高校生側の油断しきった顔に溜息が出た。
「あんなんじゃ負けますね。」
中学生の実力はまだ分かっていないけど、どちらが勝つかは明白だった。
もう、見る必要は無いです…よね?
この空気にはどうも馴染めそうにありません。
私は、逃げるようにその場を後にする。
「おい!待ちやがれ!!」
…わけには行かないようです。
「何か用ですか?」
振り向いてみると、同じコートの人が3人いた。
「お前もボール取ったんだろ?大人しく渡せよ!」
「嫌です。」
冗談じゃないですよ!
このボールは私のたんこぶと引き換えに手に入れたんですから!!!
「じゃあ俺とボールを賭けて試合しろ!元々ムカついてたんだ!お前みたいな女が合宿に参加してるなんてよ!!」
リーダー格みたいな人が言った言葉にさすがの私もキレた。
男女差別発言は許せない。
「そこまで言うなら、いいですよ。でも…
後悔しても知りませんから 。」
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「ゲ…ゲームセット!ウォンバイ世羅6-0!!」
人気が少ないコートに終わりを告げるコールが響く。
私と試合した男は余程悔しいのか膝から崩れ落ちた。
「馬鹿なっ!俺が1ゲームも取れないなんて…!!」
「だから言ったじゃないですか、後悔するって。」
愛用のラケットをケースに入れ、出口へと足を進める。
後ろで「何者だ?!」とか「女じゃねぇ」とか聞こえる。
失礼ですね、れっきとした女ですよ。
「あれが冷酷無悲の姫君か…。」
誰かが呟くように言った言葉は吸い込まれる見たいに消えていった。
あっ、ちなみに『冷酷無悲の姫君』っていうのはこの合宿で付けられたあだ名です。
唯一の女参加者だからか、噂が噂を呼びいつのまにかつけられてました。
どこかのゲームキャラみたいな名前で私には大それたあだ名ですよね。
だって本当の私は……
「……あぁぁ怖かったぁ〜〜〜!!!」
只のビビリでしかないんですから(笑)
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