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▼ 野良犬(学園)



「俺は学がなくて苦労した。だからお前にはそうなって欲しくないんだ。」
そう親父は言って、無理して本当に文字通り骨身を削って、この学校に入れてくれた。

全寮制のぼんぼんの男子校。
俺のアパートの一室が丸ごと入るような寮の個室、プールにジムや色々完備された施設、有能な講師陣…。とにかくゴージャス!

親父の気持ちは痛いほど嬉しかった。でもこの学校独自の習慣には慣れなかった。各委員会が権力を持ち、学校生活に確かな影響力を及ぼす。そのカリスマは親衛隊が出来る程だ。
その生徒会や風紀にきゃーきゃー媚び売るのが、性に合わなかった。それに俺は見た目も親父と似たような、こいつらに言わせたら『貧乏くさい』『ヤンキー』だったから、誰もダチなんか出来なかった。だから俺も尖った反応をしちゃって、悪循環ていうか仲良くしたくもねえし。

でも本当は仲良くしたくもあったんだ。教室に入ったり目が合った時、そんな風に気まずい顔をされたら、傷つく。
そんな俺に転機が起きるのは、季節外れの転校生がやってきた時だった。転校生は別にさして特筆するところはない見た目、ただ俺と同じく正規の制服ではなかった。

「ここ君の陣地?」
「は?」
校舎裏の庭の横、薄暗いそこが俺の唯一の安息の地。その転校生、東雲はそこにずかずかと踏み込んできた。東雲は見た目に反し、やたら度胸のある男で、久し振りにかち合う視線が口には出さずとも少し嬉しかった。
「君も庶民組でしょ?隣失礼しまーす、よいしょ。」
「おい勝手に、っ」
隣にすとんと座られる。東雲は俺より一回りは小さいだろうか。
庶民組というのは、普通この学校に来るのは幼稚舎からエスカレーター式に上がってきた奴らばかり、途中編入組はたいてい庶民な訳だ。
「結構、この学校居心地悪いよね。」
「かなりな。」
東雲は話しながら弁当を消費していく。中身はご飯と焼きそばが50:50。凄いなクールだ。東雲はただ漫然と、怖い見た目でろくに返事もしない俺に話しかけ続けた。
本当は久しぶりの誰かと一緒の空間が、食事が嬉しかった。嬉しかったんだ。初めて、ここに仲間が出来た。

「おはよー!」
「おお。」
「今日の体育、サッカーだって。良かったじゃん、のん好きでしょ?」
「まぁ、つかのんは止めろ!」
野村から変化していて気づいたら、のんになってた。今まではただ退屈だった生活も、仲間がいるとそれなりに色づき初めた。二人の時甘えてくる東雲がかわいいとも思った。
「………」
授業中、東雲が一心不乱に黒板を写しているのを見る。眉間に皺が寄ってるのが、何故か、いやらしいと思った。
「こんなに染めてー…、のん将来絶対禿げる。」
「うるせー馬鹿。」
最初はただ好きでやってたのに、だんだん東雲に心配されたくて髪の色を奇抜にしていった。

「あ、」
「何?」
奇妙な一体感から、思春期の感情の揺れから、気づいたら取り返しのつかないところにいた。
東雲が間違いなく好きになってしまった。
ただ俺は東雲より頭が悪く、気も回らなかった。最近付き合いの悪い東雲を不思議がるだけだった。それが間違いだった。



ある日街に出てブラついてると、東雲がCDショップから出てくるところだった。
「しの、」
声をかけようとした瞬間、けたたましいアラーム音が鳴って店員が出てきた。東雲の泣きそうな顔が見えた。よくわからないが、これは、
「しの!」
それでも東雲の手を取って逃げた。走って走って走った。振り返らなかった。








「…ごめん。」
たどり着いた公園で、ブランコを漕ぎながら東雲はぽつりと零した。
「なにが、」
「………」
促すと東雲はバックから一枚CDを取り出した。たぶん、鳴った元凶。
「パクったのか。」
「…うん。」
「………」
東雲はそんなことするタイプじゃない。その目をみると、すぐに揺らぎがわかった。

「……さ、齋藤……く、んが、」

齋藤はクラスメートにいる。それ以降言葉は聞こえてこなかった。追い詰められていることだけ分かった。CDを握る東雲の手が震える。CDに涙が落ちる。
何で気付かなかったんだろう。優しい庶民組なんか、格好のいじめの対象だろうに。
「どうしよう、お店の人、きっと困って、」
「しの、」
東雲の目からポロポロ、涙が零れ落ちる。悲しかったし悔しかった。自分に苛立った。助けてあげたかった。
「…しの、返そうぜ。そんで謝ろう。こんなん齋藤の思うツボだ、俺が何とかすっから。」
「のん、」
「俺も謝るから。」
東雲の肩を掴んでそう言うと、ゆっくり首肯された。齋藤あとで潰す。



「「ごめんなさい!」」
「…まあ、反省してるみたいだから、今回は警察には連絡しないよ。」
CDを返しにいったところ、店長は温情に溢れた人で何とか許してもらえた。ほっと二人で息をつく。良かった、と顔を上げる。

その時、ふと背後に人の気配を感じた。
「うちの生徒が何か?」
後ろを見て、血の気が引くとはこの事。うちの生徒会長だった。東雲を見ると同じく真っ青な顔をしていた。
ただの生徒会長ではない。うちの生徒会長は委員会のトップ、教員も適わないほどの権力を持つ実質的なトップでもあるのだ。バレたらタダでは済まない。
誰かが口を開く前に、俺が説明した。
「あー…、俺があれパクって来いって言ったら、こいつヘマして。超ついてねー!」










呼び出しを受け、初めて生徒会室に向かう。東雲の震える視線を受けながら、教室を後にした。
「………」
一段とリッチな扉。それが生徒会室の扉、エリートの中のエリートのみが存在する、俺とは無縁の地。軽くノックして、返事が来る前に開ける。
「来たぞ。」
中は広く、高そうな本棚食器棚、ソファー色々ある。その一番奥、社長の椅子っぽいのに腰掛けた会長が振り向いた。
「最近うちには似つかわしくない野良犬が入ったと聞いてはいたけど、まさか、ねえ?」
「けっ」
そう意味深に微笑まれ、カチンと来る。人間ですらないのか、エリートの前では。この嫌な笑みすら、他の生徒が見たら黄色い悲鳴を上げる。何がいいんだよ。
「用ってなんだよ。」
「そうだね、犬には犬のお仕置きをしようかと思って。」
「…」
要するに昨日の罰が来るらしい。多少は覚悟していた。停学は、親父悲しむな。だが、自分の決めたことだ。顔を上げる。

「脱げ。」

「…………は?」
停学や外出禁止、そこらを予想していた俺は面食らった。
「一回で理解しろ。脱げ。」
「……なんでだよ」
事も無げに会長が言う。意味が分からず聞き返すと、
「着たまましたいのか?セックス。」

ぽかん。頭が真っ白になった。確かにこの学校にはたくさんそういうことはある。だがこんな俺にそんなことを言った奴は初めてだった。
「ざけんな!なめんなよ、誰が、んな」
「ふうん?」
会長の机を蹴ると、会長は怒った風もなくペンを回した。冷たく笑って続ける。
「君が万引きを強要した、証言もある。」
「………」
「まあ東雲くんは否定してたけどね。でも僕が働きかければ、
退学なんか訳ないよ。」
退学。覚悟していなかった一言に、会長の声が遠くなる。退学。
「せっかくお父さんに入れてもらったのにね。」
親父という言葉に覚醒する。本当あんな一生懸命やってくれたというのに。全部、ダメにするのか?
「東雲くんにも会えなくなる。」
じんわり汗が滲んだ。会長が笑う。

ベルトに手をかける時、目を閉じて東雲を思い出すことにした。





会長の机に仰向けに寝て、あそこが見えるように足を開く。なんて事はない、エリート犬に噛まれるだけだ。
「あっ」
「好き者だね〜、指すんなり入っちゃった。」
ローションをたっぷり垂らした、東雲の為にちょっとずつ(勝手に)慣らしてたそこに、会長の指が無遠慮に入ってきた。中でぐにぐに動く中指が気持ち悪い。
「あふ、ん、くっ」
「喜ぶなよ。お仕置きにならないだろ。」
喜んでない。中指が執拗にゆっくりゆっくり、中のしこりをこね回す。前は会長が優しく触って、いっそ強制的に勃起させられた。悔しくて恥ずかしくて、犬に噛まれたとしても痛いな、畜生。
「あっ、あっ、何してっ!くふっ」
「何でしょう?」
会長が取り出したのは、針のない注射器みたいなもの。怖くて腰が引ける俺に見せつける。
「やめっ、くそ、変態!あっ、あん」
「なまいき」
ちんこ、一番大事で敏感なところを見ず知らずの、ていうか嫌いな部類の人間に好き勝手される。結構怖い。
舌先で尿道口をチロチロされ、気持ち悪い快感が走る。気持ちいいのが怖くて悔しい。ああもう。そこにその注射器をあてがわれた。
「いっ!い゛いぃいっ!」
「はは、みっともない。」
細い先とは言え、それが無理やり尿道口にぶち込まれる。いっ…て!痛みでひくひくする、軽く萎えたそれを優しく手コキしつつ、会長はゆっくり注射器内の液体を中に注いだ。
「あ゛っ、やだっ、あっ、あぐうっ、ん、んうっ」
「ただのローションだからヤバくはないよ。」
現金に勃起した中、そこを液体が逆流する。その普段と違う感覚にぞわぞわ鳥肌が立つ。ど、どこまで入っちゃうんだ、コレ…?怖くくなってきた。
「あうっ」
注射器が抜かれると、そこはとぷ、とローションが漏れた。何か変な感じがする。出したいけど、こいつの前で。…無理だ。
「あっ!」
「ふふ、たまには雑種も可愛いよね。」
会長はそう言い、俺の手を机に置かせ尻を掴んだ。入ってこようとする会長の高校生離れしたのに、腰が引けて、しばらく逃げる追うの繰り返しだった。
「諦めろ。」
「あ゛っ!あっ、しの、あっ、く、るし…!」
腰を抑えつけられ、ビチビチにケツを押し広げちんこが入った。エリート犬は痛くないけど、やっぱり初は東雲が良かったとか殊勝なこと考える。
「あっ、あぐっ、んっ、んっ」
後ろからばつんばつん突かれ、机に縋りつく。ローションたっぷりのちんこがぷらんぷらんと震える。ケツの中の肉が引きつって痛かった。
「ケツに突っ込まれて大量射精してみろ。」
「あっあっあぐっ、はぁんっ、あっ、しのっ、そこ、っは、だめ、っあ゛!」
後ろからちんこ掴まれ、中も押し付けるようにしこりをコリコリしてくる。ちょっ、しの激しい。ローションちんこを激しくもみくちゃにされて、太ももが引きつってケツが引きつって、視界がホワイトアウト。すげ、でるっ!

「ああ゛ぁあっ、いっぱっ、出るっ出るっいっぱい!あ゛あんっあっあ゛っあうっ!あ゛ぁ〜っ出てる〜っ!」
ローション分、射精は本当に長かった。長い射精感、たまらない、びゅくびゅくびゅくって何度腰が震えたかわからない、長いこと尿道を精液が抜けてく。ケツもきゅっと締まってちんこをありありと感じた。
「は、あ、あ…あ…」
見ず知らずの、ていうか嫌いな部類の人間に死ぬほどイかされた。ぼやけた頭はとくに何も思わなかった。
「早すぎ。口でして。」
「んぶ、」
中でイけなかった会長が、それを俺の唇に押し当てる。さっきまでケツに入ってたやつ。初めてみた他人の完勃起は、予想以上にアレだった。また東雲の顔を思い出す。



「のん!大丈夫だった!?僕のせいで、のんが」
「平気平気。ちょっと灸すえられただけ。」
そう東雲の頭を撫でると、心底ほっとしたような顔をされた。その顔を見られただけでよしとしよう。

『連絡を入れたら、何があっても来い。これからよろしく、雑種。』
犬に噛まれる位、訳ない。


つづく?







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