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▼ 犬以前(異常設定)



※雄犬以前の話 series初見

初めて旦那様に会ったのは、まだ5つか6つの頃でした。同じ位の齢の旦那様は、子供とは思えないほど屈託のある瞳をしていました。それでも私はその瞳に魅入られ、犬に生まれついたことを神と科学者達に感謝しました。

旦那様も凛々しい青年になると、懇ろになる異性も現れてきました。しかしそれはいつも長続きせず、私はそれにどこか納得し安心していました。あの捻くれた心を理解出来るものなど、人間には存在しないと思っていたのです。強気で攻撃的でセンシティブ、簡単に言うと人間社会には不適合な人間なのではないでしょうか、旦那様は。長く時を共にし、そんな奢った考えを抱いていました。
だがある時から、長く続く間柄の人間が現れました。私はその逢い引きには連れていってもらえず、御屋敷で明け方まで起きて旦那様を待っていました。いつ帰ってきても、旦那様は待っていた私に一瞥も下さいませんでした。私にはそこまでの思考回路が存在せず、その時の自分の思考の真意は未だ読み取れません。ですが、ただ、寂しいとだけは感じていました。

ある日、旦那様は帰ってくるや、私を思い切り張り倒しました。今まで旦那様からそう言った仕打ちを受けたことのなかった私は酷く驚きました。反応が出来ない私に更に蹴りが飛んで来ます。地べたに這いずりながら旦那様の真意を探るようにその目を見ると、旦那様は苛立ったようにもう一発もう一発と沈めてきます。
私はとても悲しくなりました。殴られたからではありません。確かに頑丈な犬を興味本意でいたぶる輩は存在します。しかし鞭やナイフ、針、果ては銃器等、決して自分の体ではないもので攻撃します。旦那様は御手がさぞ痛いだろうに、私を殴るのを止めません。私は思いました、きっと旦那様は本当は殴って欲しいんだと。ですが私に旦那様を殴る事は出来ません、そうプログラムされているからです。私はそれがとてもとても悲しかったのです。



ある夜のこと、私はいつも通り御屋敷で待機していたのですが、旦那様は出かけてすぐに帰ってきました。
「お帰りなさいま、」
挨拶もままならない内に引き倒され、服に手をかけられました。旦那様からは他人の香水の香りがします。機嫌を窺うように旦那様を見ても、その心情が読み取れません。初めて見た表情でした。
「旦那様…?」
「黙れ。口をきくな。」
黙れと言われたので、私にはもう何も喋ることは出来ません。ベルトを解かれ、下半身を覆うものは全て剥ぎ取られました。今日は下半身を、性器を蹴られるのだと思いました。普段はそんな所を決してなぶりはしないので、今日は一体どうしたのかと心配になります。
「………!」
息を飲みました。旦那様が御自身のちんこを取り出し、扱いて勃起させたのです。私は犬ですのでそう言った事への知識は皆無です。旦那様が何を望んでいるのか、見当もつきません。旦那様を見つめていると、私の足を肩にかけ尻の穴にそれを押し付けてきました。
「………っつ!」
そして無理に押し込んできます。私の尻の穴は旦那様のちんこで引きつり、ひどく痛みます。生物学的知識はあるのですが、旦那様のこの勃起や挿入の意図は教えられていません。全くの想定外、データ外でしたが、私は中に感じるその人の暖かさに何故だか涙が出そうになりました。
「……っ………っ!」
旦那様が腰を動かされる度、粘膜が傷ついて痛いです。口をきくなと言われたので、呻く事すら出来ず手をきつく噛んで耐えることしか出来ません。知識では性行為とは快楽を伴うものとありますが、私には全く気持ちのいいものではありませんでした。喉までちんこが突き刺さったような圧迫感と、内臓が抜き出るような不快感、肉が引きずられる激痛。
「…なん、で、勃ってんだ、」
ただ私にある恋や愛と言った情や欲は旦那様に集積されている為、痛みだろうと何だろうと旦那様との性行為に反応しないことは逆に決してないのではないのでしょうか。私は初めて自分のちんこが勃ったのを見ました。ただ腹が熱いような感覚でした。旦那様のそれが尻に出入りするのを、不思議と見ていました。性行為なら、何か私は旦那様にしなければならないだろうに、私は如何せん知識不足でした。旦那様に窺うことも出来ませんでした。
「っ!っ!」
ですが、旦那様が私の腕を御自身の背中に回させた時、これが犬の自分の前足が自由に使える訳なのだとは理解しました。


おわり





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