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▼ 足かけ(小スカ)



家の二階から何とはなしに外を眺めていると、クラスメートが下の道をひょこひょこ走ってるのが見えた。
「なんだ…?」
股間を押さえて、どこか青ざめた顔で辺りを気にしている。ぴょんぴょんと少し飛び跳ねながら前のめりで急ぐ姿は、普段からは想像出来ない程みっともなかった。
「………おしっこ?」
しばらく彼を観察して出た答えはそれだった。おしっこしたいけど、周りには公衆便所もコンビニも公園も、せめて立ちション出来そうなところも近くにはない、といったところか。困ってるとこを近くで見てやろうと、階段を降りた。

「何してんの。」
「あっ!近藤!?あれお前家ここらへんだっけ!?つか、それより便所貸して!!」
ひょこひょこ走る彼のもとに近づくと、一気にまくし立てられた。焦ってるのか声がでかい。
「なんで?」
「なんでって…、」
質問すると一瞬声のトーンが下がった。もじもじと声を抑えて、切迫した感じで訴えてきた。
「しょ、小便したいんだよ…!」
「おしっこ漏れそうなの?」
「そうだよ馬鹿!早く、も、早く!」
ぴょんぴょんと人前なのに跳ねながら頼み込んできて、可哀想になった。すごく可哀想だ。
「ごめん。今家バキュームカー来てんだ。」
嘘だけど。彼はみるみる失望したような表情になった。
「今時ぼっとんかよ!もういい!」
勝手に怒った彼が走り去ろうとする。ちょっとした意地悪のつもりで足をひっかけた。
「ぶっ!!」
足元なんて全く気にしていなかった彼は派手にすっころんだ。それから立ち上がろうとしたのを彼は途中で止めた。

ジョロジョロジョロジョワー…

ズボンの股の部分が濃い色になって、おしっこが道路に垂れていく。こっちからも見えてしまうくらいに、道路におしっこの水たまりが出来た。よっぽど溜まっていたのか、なかなか長い時間放尿シーンを見れた。
「………」
彼は怒ったような泣きそうな顔をこっちに向けてきた。
「…ジャージ貸す。」
同情した風にそう言うと彼は立ち上がったが、ズボンの内股部分はぐっしょり濡れていて、靴にまでそれが垂れている。道路の真ん中には水たまりが残っている。
「………」
彼が歩くたびにぴちゃぴちゃ音が鳴る。家に上げると家が濡れるので、庭に彼を連れてきてジャージとタオルをやった。
「………」
「玄関とか汚したくないし。」
彼は真っ赤な顔で睨んできたが、俺がそう言うと何も言わなかった。物置の影でこっちに背をむけて、ズボンを脱いでジャージに着替えた。案外お尻は白かった。
「これにズボン入れたら?」
紙袋を持ってくると引ったくるように取られた。
「………」
彼は漏らしてから何も言わなかった。ぐっしょり濡れたズボンとパンツを入れた紙袋を下げ、おしっこでぎゅぽぎゅぽ鳴る靴を履いて、上は制服下は短パンのジャージでノーパンというちぐはぐな格好で帰っていった。
あの制服やパンツや靴下や靴をこれからどうするのか、自分で洗ったりするのか、そう考えると笑ってしまう。


おわり





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