「なまえ殿、半兵衛殿、」


「あれぇ?長政どうしたの?」

「やだやだ!なにいきなりかしこまっちゃって!」


長政の背中を思いっきり叩いてやると、長政は少しだけ目に涙を浮かべて「痛いですよ、なまえ殿」と苦笑いを浮かべた。そんなに強く叩いてないよ?


「それより、なんか話でもあんの?」

「あ、はい!そ、某、……お父さんになりますッ!!!」



「「…………………うそ、」」


ここは都内某所にあるファッション雑誌編集会社。
私に何やら真剣な顔して話しかけてきたのは浅井長政。私の後輩で、私たちの働く会社の近所にある花屋に勤めている市さんというとても綺麗な女性と2年前に結婚した。
ちなみに、私の隣で私と同じく口を開けて固まってるのが彼氏の竹中半兵衛。ここだけの話、私より背が低い。


「それって……、市さんおめでたってこと?!」

「はい!!」


「うそぉ!!!!」
「いやぁ〜、意外と長政もちゃっかりしてるね」
「でもさ、長政と市さんの子供って、絶対可愛いよね!!絶対美人さんだよ!!」

「いや、そんな!!」

「で、いま何ヵ月なの?」

「3ヶ月です。」

「じゃああと7ヶ月かぁ〜、」
「今は6月だから……、4月くらいが出産予定になるのか〜、いいなあ〜!早く見たいよ−!!」
「春生まれって、いかにも長政と市さんの娘って感じだねぇ」
「ね!」

「それでは某、秀吉部長にもこのこと報告してきますゆえ、」

「律儀だね〜、」
「秀吉様、泣いちゃうよきっと」

「はは、喜んでもらえればいいのですが。」


そう言って長政は部長の机がある方に向かっていった。



「子供かぁ〜、」

「どんどんみんなに先越されるね〜、」

「そうだね〜、」

「それにしても、妻のおめでた報告を私たちに一番にしてくれるなんて、良い後輩を持ったね〜、半兵衛」
「だね」


ぐっと背を伸ばして天井を眺める。
隣を見ると、半兵衛も同じ格好をしていて、なんだか笑えてしまった。



next・・・?


mae | tugi

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