「さあ、こちらへ」
「・・はい」
男の部屋に招き入れられた溟は当たりを注意深く確認しながら歩いた。
「―――!!ガッ!!!」
「馬鹿な女だ・・この私の美貌に惹かれてノコノコと着いて来るとは・・。だが、馬鹿でも私の欲望を満たすには丁度良い。」
「・・ガハッ!!」
いきなり後ろから首を鷲掴みにされベッドに抑え込まれた溟は、苦しそうに声を上げた。
「さあ、ディナーの始まり・・」
「そーはいかねえぞ?」
「!?」
「ッ!――このッ!!!」
「グハッ!!?」
部屋の片隅からサッと現れた朔に驚き気が緩んだらしい男の隙をついて溟が男を弾き飛ばす。
「もっとお利口なヤツだと思ってたんだが・・しょせんはヴァルガか」
「でも、さっさと本性表してくれて好都合ですよ!」
「大丈夫か、溟」
朔が心配そうに溟の首を見るが、溟は平然としていた。
「朔ちゃんが居てくれてるって分かってたし、それに・・早くこのお仕事終わらせて壱號艇でゆっくりしたいんです!!」
「そうだな!2人でさっさと終わらせようぜ!」
「・・くっ!!」
「「あ!!」」
朔と溟が男に向かって構えると、当の本人は恐怖に負けたのか部屋を飛び出し、外へ逃げてしまった。
「チッ、どこまで面倒かけやがる!」
「ここは私が!」
「了解!頼りにしてるぜ!」
「蝶乃散歩≪ティエアロー≫」
そう言葉を発した溟に応えるように、彼女の手のひらに光が集まり、それは紫とも桃色ともつく色に輝く蝶々になった。
「さ、私にあの男の居場所を教えて」
溟がその蝶に願うと、蝶はヒラヒラと光を放ちながら暗闇へと迷いなく進んでいった。
「あっちです!朔ちゃん!」
「おっけー!さすが溟だな」
朔に誉められ、溟は嬉しそうに微笑んだ。
そして、2人揃って夜の闇へと向かって行った・・。
「(・・ここまで来れば)」
「よお、ヴァルガの色男さん」
「――!!何ッ!!!」
mae | tugi