「本日は楽しいパーティになることを祈っております。」
「どうも、これは・・ありがとうございます。」

黒い燕尾服に身を包む男性に軽く挨拶をする女性。


それは変造をした溟だ。

少し濃いめのメイク、そして高いヒールの靴を履いているため、少女というよりは女性に近いいでたちになっている。

「貴女に今宵幸運が訪れますように。」
「フフ、ありがとうございます。」

チュッと軽く手にキスを落とされ、溟ははにかんだ。
だがそれは表の顔に過ぎず、内心ウンザリしていた。

「では・・後ほど」



「・・ふうー」

男が一旦溟の前から立ち去ったのを見計らって溟は大きくため息をついた。


「(まずあの男に気に入られたし、第一関門突破・・!あとは・・・)」

≪で、どうよ?≫
「朔さ・・じゃなかった・・・朔ちゃん」

室内を見渡している溟の耳に朔の声が届いた。
この場に朔はいない。この屋敷の屋外で待機している朔が無線で溟の置かれている状況を把握し、頃合いを見て合流する手はずとなっている。

「もー!疲れました・・まさか壱組に入って最初の仕事が潜入調査だったなんて・・」
≪仕方ないだろー、俺レベルになると結構目立つし≫
「それはよおーく分かってます。

 これからターゲットの部屋に向かいます。」
≪お!直々に呼ばれたか!さっすが溟だ!信じてたぞ!≫
「そうゆう優しさの大バーゲンはやめて下さい」
≪そんなつもりで言ってねえよ≫

溟には、声を聞いただけで朔が肩をすぼめた光景が目に浮かんだ。

「分かりました。とにかく、無事上で会えること祈ってます」
≪ああ、そうだな。じゃあ頼んだぞ≫
「はい」

朔に返事を返し、溟はキリッと自身を引き締めた。



「あの、」

「ああ、君か・・。どうしたんだね?」
「連れて行ってはいただけないでしょうか・・」

溟がターゲットの男に声をかける。
そうすれば男は嬉しそうに微笑み、溟の肩を抱いた。

「仕方ないですね。では、少し早いですが・・2人だけの時間を楽しみましょう。」

そう言って笑う男を見ながら溟はこの場所で起こった事件について思い返していた。


この男の主催するパーティ、それ以外にこの男と関った女性がある時を境に姿を消しているのだ。
その堺、というのが・・この男の部屋に入ったというところだ。

溟は輪第壱號艇闘員として、その部屋へ向かおうとしている・・。


mae | tugi



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