「虧ちゃん!」
「无くん?」

廊下を歩いている虧に、无が声をかけた。
手にはたくさんの本を抱えている。

「今から嘉禄の部屋、行くんだけど!一緒に行かない?」
「ん?いいよ」

无の問いかけに一瞬迷ったが、虧は頷いて无の持っていた本を少し持った。



「嘉禄!本いっぱい持ってきたよ!」

「・・」

「あのね図鑑!」
「……」

「――― (今日もだめかな…)!」

少し下を向いた无の肩に虧は手を置いた。


「大丈夫。ね?嘉禄さん」

「・・・。…ずっと無視していたけど、君の話をちゃんと聞いてみようと思って」

「うん」
「!? !! 嘉っ・・・」

バッと虧の方を向いた无に、虧は頷いた。


「嘉禄!!」
「わあああああ!!!无くんちょっ!!!!!!」


嬉しさのあまりなのか、興奮した无は持っていた本を嘉禄目掛けてぶちまけてしまった。
その本を回収し、嘉禄を無事に椅子に座り直させたところで嘉禄が口を開いた。

「君は大人しくしてて、俺の質問だけ答えてくれる?」

嘉禄の前に正座をさせられているが、嘉禄から話をしよう。と言われた无はすごく嬉しそうにしている。


「君・・」



「ぐ・・・あっ・・・・」

「え?」
「!」

「嘉禄!?」
「嘉禄さんっ!!」

やっぱり駄目か・・。
嘉禄は无と話そうとすると、それを拒絶するかのように体が反応し、苦しみ出す。
それでも嘉禄は必至に无に質問を繰り返した。

「今まで話そうと思っていた事を全部…っ、全部話して!!」

「嘉禄さん、」

嘉禄を抱きしめる无の隣に虧も並んで嘉禄を支えた。


「知りたい!本来の自分が他にあるならっ俺は自分の声を無視する そして――君の声を聞くよ!」


「无くん、」

「・・・っ!」



mae | tugi



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