「んん〜〜・・眠い…」
結局徹夜をしてしまった虧は、眠い目を擦りながら貳號艇の廊下を歩いていた。
「あれ?虧どうしたの」
「あ?喰か・・徹夜してたの」
「そう。御苦労さま」
朝から一発目に出会ったのが喰であることもどうでもいいくらい眠い虧は、喰が横に並ぶのも気にも留めず歩き続けた。
「ん?あれ」
「與儀、と无君?」
「どうしたの?」
「あっ、喰くん!虧ちゃん!昨日、无ちゃんがね!部屋の前で…」
「え?羊が教えてくれなかった?あ―――・・・それは… 幽霊見ちゃったね、无君」
「え!?」
與儀によると、昨日の夜、无は羊を大量に運んでいた名も分からない男を見たというのだ。
聞きながら虧は時辰か・・。と分かっていたが、喰がそれはそれは楽しそうに與儀をいじめるので黙っておくことにした。
「(それに、時辰さんからも口止めされてるし・・。まあ、平門さんのことだから、バレてんだろうけど…)」
「あ!!」
「え!?」
「與儀君あれっ・・・」
「え!?」
それからしばらく與儀をからかい続けている喰は、とどめに與儀の首を本人に気付かれないように掴んだ。
すっかりお化けにビビっている與儀は、悲鳴を上げながらその場を去った。
「與儀っ!!」
「あー无君いいよ!與儀君は僕が回収してくるから。无君は嘉禄君に朝食持っていく時間でしょ?」
「うん…!」
「まあ、頑張って」
「うん!!」
喰の言葉に无は嬉しそうに返事を返した。
「・・・・・」
未だにボオーっとする思考をなんとか必死に覚醒させようと眉間にシワを寄せて立っている虧に无が声をかけた。
「虧ちゃんも、嘉禄のとこ行く?」
「・・・。うん、そうだね」
嘉禄には未だにちゃんと会っていない。
この前なんとなく見たけど・・、これもいい機会だと、虧は无の後に続いた。
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