国家防衛機関《輪》
第貳號艇


「羊さ〜んレンチ取って〜」
《コレメェ〜》
「さんきゅっ!」


輪は巨大な空を飛ぶ船で各地を移動する。
そんな輪第貳號艇内、内……といっても、内側も内側、たくさんの種類のコンセントや通信網が張り巡らされているところに虧はいる。

第貳號艇闘員である虧は、昔からの機械好きが高じ、女でありながら第貳號艇のメンテナンスもこなす存在となった。
今は、そのメンテナンス中……。


もう2週間も御天道様を見ていない。
頼りになるのは腕時計と、随時運ばれてくる食事。これが無くなれば、たちまち日にち感覚、はたまた時間の感覚さえ一瞬でなくなるのだ。

「よし!終わったー!」
《平門二報告スルメェ?》
「うん、よろしく」

虧の横にピッタリとくっついている羊に言葉を返せば、羊は平門とコンタクトを取るために回線を繋ぐ。

「あー!これで5日間の休息が!」
《虧メェ?隣二イルメェ、カワルメェ》
「は?なんで?!」
《急用ラシイメェ》
「休養の間違いであってほしいけど?」

そうぶーたれつつ、虧は羊の回線を自身の携帯へと移行した。


「はい、虧です。」
「なんだ?不服そうな声だな」
「何が悲しくて仕事終えてすぐに平門さんの声聞かなきゃいけないんですか?」
「まあいいじゃないですか」

眉間のシワが増える虧と違い、平門は心の底から楽しそうに笑っている。

「で、なんですか?休養期間伸ばしてくれるとかいう話なら喜んで聞きますけど」
「まさか、そんな虧が喜ぶことはしませんよ」
「あーははっ、……どうもありがとうございます!」

「でだ。本題に入るが、すぐに艇の外に出て、與儀達の救助に向かってほしい」
「はい?」
「いやね、電話越しに泣いていたから」



平門はこんなことを言いながらも笑っていた。




○●○


ザッ―――― と風をきる。

「ったく!仕事し終えたいたいけな少女をすぐに戦地に送り込む奴がいる?!」
《虧、少女ッテ年齢ジャナイメェ》
「羊さん?!!」



ミネというヴァルガが今居る場所近くの町で暴走した。それは平門から事前に知らされている。
それで、なんでその後始末よ?!このわたしが!

「だいたい!與儀がいるならそれでいーで……」


しょうが!と、言葉を続けようとした虧だったが、それはやめにした。

「なにやってんだか………」


目前に見えてきたのは、やたらと腹のデカイ男、なにかに取りつかれて動けなくなっている與儀やツクモ、それに……よく知らない人物2人だった。


《ヤッチャウメェ?》
「やっちゃわなきゃみたいだね〜」

羊に返事をすると同時に、虧は手に巨大なモンキーレンチを持った。


そして、それを……

「ブチ当たれ!!!!」


これまでの鬱憤と共に、攻撃対象めがけてぶん投げた!



「ぎゃあああああ!!」

《逃ゲタメェ》
「先に追っておいて!」
《了解メェ!》

「虧ちゃん!!」


見事、虧の投げたモンキーレンチは巨大男の後頭部に直撃。しかし、相手も能力者であるためか、気絶には至らず…逃げられてしまった。

「…………與儀、」

虧は、拘束のとけた第貳號艇闘員仲間の與儀を睨んだ。そもそも與儀が泣き言を言わなければ、虧は多分休息をとっていたところである。


「えっえっ?!あの………?!虧ちゃん怖い…」
「アンタの!お陰で!貴重な休息時間が減ってんの!ったく………」



01:工員





mae | tugi



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