「今回は虧とか」
「そうですね喰さん」

煌びやかな舞台の袖、暗転しているその場所に虧と喰はいる。
虧に至ってはかなり派手でスカート部分が無駄に広く開いたドレスを着ている。

「まったく、ツクモちゃんを期待してたのに」
「あーそー」

あからさまに嫌そうにため息をついた喰に対し、虧も負けないくらい嫌そうな表情を返した。


「虧ちゃ〜〜ん!」

「无くん」

「ドレス、綺麗だね!」
「ありがとう无くん」

自分の姿を純粋に誉めてくれた无に対し、虧は笑顔を返した。

「大丈夫なのかよ」

「あー大丈夫だよ花礫君」

无の付き添いだろうか、一緒にいた花礫は不思議そうに2人を見た。
そして、そんな花礫に対し喰は笑顔で返事を返した。


「今回の劇はねー、題材がアレだから」
「は?」

「ロミオとジュリエットなんだけどさ、ねー虧」

「ん?ああ、そうそう。このロミオとジュリエットはお互いを殺したいほど憎んでるって設定なんだよ」

「おい・・それってどうなんだよ」
「虧ちゃんと喰くん喧嘩するの?」

虧の言葉を聞いて、不安げな表情を无は浮かべた。

「无君、劇だからこれ」
「喰と遣り合ってる場面があっても、一応演技だから手加減してるよ」

「そっか、」

「てか、これってまた一斉捜査の後のケアだろ、題材重くね」
「まあーね、でも人間って恋愛でも何でも、スリリングさを求めるでしょ」
「特にドラマや舞台に関してはね」
「・・」

虧と喰があっけらかんと答えれば、花礫は納得したのか分からないが黙った。


「じゃあ、行きますか」
「そうだね」

「无、前行くか?」
「うん!でも・・」
「あ?」
「危ない事も本気でやれるんだよね、虧ちゃんと喰くん」
「あー、そうなんじゃね」

「それって、すごいことだよね!2人とも心が繋がってるってことだよね!ね、花礫!」
「ソレ、アイツ等に聞こえてたら殴られるんじゃね?」

「えっ!?」


「「(聞こえてるんだけど・・)」」



僕はあえてそれを遮っていた





mae | tugi



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