「だっさなっきゃ負けだぞ!最初はグー!」
「ちょっと!? 朔さん!!」
「じゃーんけーーん」
「だから聞いてって!」
「ぽん!」「ぽん!」


「・・・ああ、」

虧の静止の声など聞かない朔の掛け声につられ、反射で虧は手を出してしまった。

「お!勝った!」
「いや、勝ったじゃなくてですね・・」

虧は呆れながら自分と朔の手を見た。

「虧、お前負けたんだから俺の言う事聞けよ〜」
「え、待って意味が分からないんですけど・・いつからそんなルールになったんですか?」

「いつ?今?」
「ハア!?」

あっけらかんと答える朔を、虧は蹴ってやりたい気分になった。

「で、なにをすればいいんですか?」
「お!聞いてくれるのか!」
「朔さんの場合、言う事きかないと梃子でもこの部屋から出してくれそうにないですから・・」
「さっすが虧!分かってんな!」

虧の言葉を聞いて、朔は大きく笑った。


「そうだな… アレはどうだ?」
「あれ・・?」

指をパチンッと鳴らした朔を、虧は不思議そうに見た。


「ハグ!」
「はぐう?」
「抱きしめていいぞ!俺を!」

何故か自分で「ホラホラ」と虧を促す朔にため息をもらしながら虧は近づいた。

「なんで朔さんがドヤ顔なんですか・・、」
「楽しいからな!」
「意味不明です」

そう言いながらも、虧は腕を広げて待っている朔に抱きついた。


「なんかいいな〜こうゆうのも!」
「そうですか?」
「よくないか?」
「・・まあ、人に抱きしめられると心落ち着くとか言いますしね」
「な!」

ヘラッと笑った朔をどうも責める気にはなれず、虧は彼の紅く、大好きなワインを想わせるその髪をゆっくりと撫でた。

「ん」
「朔さんの髪、素敵ですよね」
「そうか?」
「ワイン色、・・大人の色気ってやつですか?」

虧が首をかしげながら言うと、朔は少し照れたような、嬉しそうな表情を浮かべた。


「そっか、お前ワイン好きだもんな〜そっかそっか!」

その後も嬉しそうに笑う朔を見ながら、虧はしばらく彼の髪を撫でた。



私の住む世界を照らして





mae | tugi



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