≪无、ツクモが読んでるメェ≫
「え!・・あ、お勉強の時間!」

「无、行っておいで」
「うん!じゃあまたね嘉禄!虧ちゃん!」

「うん」

自分に手を振る嘉禄と虧を見て満足そうに微笑むと、无は嘉禄の部屋を後にした。


「それじゃあ、私も・・」

「あ、待って」
「ん?」

立ちあがった虧の手をそっと掴み、嘉禄は彼女をとどめた。


「少し、ゆっくりしていきませんか」
「ああ、・・では」

嘉禄の提案にのり、虧はまたその場に座った。
快晴、光が反射する水、そんな印象を受ける涼しくも心地のいい色をする嘉禄の髪が風に揺れた。


「さっき、羊が紅茶を用意してくれてね。どうぞ」
「あ、ありがとうございます。」

嘉禄から紅茶の入ったティーカップを受け取り、そっと口をつけた。

「それと、ずっと言いたかったことがあるんです。」

「なんですか?」

カップに口をつけつつ、虧は目線だけを嘉禄に移した。


「ずっと无を支えていてくれてありがとう。」

「それは・・、私だけじゃなくて、」
「分かっている。それでも、ありがとう。」
「・・。こちらこそ、」

なんと返すのがいいのか悩んだ結果、少しばかり的から外れた答えを虧は返してしまった。

「この前も、助けられたね」
「この前…?」
「ああ。无の持っているブレスが反応した時、」
「あれですか・・でも、結局あの時は私倒れちゃったんですよ?」
「・・すまなかった。」

「あ!謝らないで下さい!! 嘉禄さんは気にしないで!ね」
「・・ありがとう。」

无が嘉禄に懐いたのが分かった気がした。
彼の笑顔は心をフッと溶かすような、安心できるものがある。

「これからは、嘉禄さんもよろしくお願いしますね」
「もちろん。」

力強く頷いた嘉禄は、ふと虧の左手を取った。

「え、」


そして、小さくなったリップ音。
もう熱や刺激を感じない虧の左手がカッと熱くなった気がしてた。

「ちょ!・・嘉禄さん!?」
「うん」

「いや!うんじゃなくてッ!!」

不意のことで驚き顔を紅くする虧に、嘉禄は笑顔を向けた。



音もなく波もなくただささやかな朝が





mae | tugi



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