「虧ちゃんっ!」

「與儀?」


貳號艇の中、虧は與儀と鉢合わせした。

「昨日も夜遅かったんだよね、お疲れ様」
「ああ、まあ仕事だしね」
「でも・・大変だったでしょう?」
「ぜんっぜん!平気〜」

そう言ってまた虧は歩きだした。
その隣を與儀が歩く。


「あ!この前プレゼントしたニャンぺローナ元気!?」
「げん・・き?」

この前のプレゼント、と言えば巨大なぬいぐるみのニャンぺローナしかない。
與儀は目を輝かせながら「ニャンぺローナ元気にしてる?」という言葉を繰り返している。


「元気って、あれぬいぐるみだし、元気かどうかなんて」
「でもさ!思わない?一緒にいるぬいぐるみって俺達のこと見てくれてるとか、元気ない時に力をくれる!とか」
「・・ハア、」

與儀の言葉がいまいちピンとこない虧は、曖昧に返事を返した。

「でね、」
「うん」
「いつも虧ちゃんに助けてもらってるから、俺の代わりにニャンぺローナに癒してもらえればって思って」
「與儀を助ける?そんなに與儀のこと助けてないよ?私・・」



「助けられてるよ。」

「そ、う?」

やはり與儀の言っている事が腑に落ちない虧は、う〜んと呻りながら歩き続けた。


「俺、知ってるから」
「はい?」

ふと足を止めた與儀の方へ振り向くと、彼はとても優しい顔をしていた。


「虧ちゃんが平門さんに頼んでくれてるんだよね。」
「・・なにを?」

「俺やツクモちゃん、他の人がなるべく”葬送”しなくていいように虧ちゃんがたくさん担当してること・・」
「・・それは、私は割り切れるし。それだけ冷めてるから、與儀やツクモちゃんは優しいでしょ。そんな心を持ってる人は無理して温かい思いを無くそうとしなくていいんだよ。」
「違うよ、虧ちゃんも優しいし温かい心持ってるよ!」

「ね!」とほほ笑みながら虧の手をそっと握る與儀を見て、虧は困ったように笑って見せた。


「ね、ニャンぺローナ元気?」

「そうだね〜、與儀に会いたがってる」
「ほんとに!?」


與儀の質問に答えてあげれば、彼は心底嬉しそうに笑った。
そして、虧に続いて彼女の部屋へ向かって歩き出した。



むしろそれは強くない方が良いの






mae | tugi



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