「おねぇちゃん!」


「ん?」

研案塔での検診のため足を運んでいた虧に、可愛らしい声がかかった。

「ああ!貴女」

「こんにちは、おねぇちゃん!」
「こんにちは!」

笑顔をパアッと咲かせながら虧の前に駆けて来たこの子は、先日虧がヴァルガから助けた子だ。


「今日はどうしたの?」

結局、この女の子を助ける際に自分が倒れてしまったが、女の子には危害は加わらなかったはずだ。
それでも研案塔にいる女の子に少しばかり不安を抱きつつ、虧は彼女に目線を合わせながら訪ねた。

「うんと、あのね」

虧の問いかけに、女の子は手を動かし、目をきょろきょろさせながら答えを導きだそうとしている。


「一応の検診だ。」

「燭先生!」
「せんせいだっ」

女の子が必死に考えている姿を可愛らしいと思いつつ見ていた虧の前に、燭が姿を現した。

「虧が助けた直後の検査では何も反応はなかったが、その後の様子を見ているのだ。大事をとるためにな。」

「ああ・・さすが燭先生!」
「せんせいスゴイの」
「そうだね〜」

燭を指差しながら楽しそうに話す女の子を見て虧も微笑んだ。

「おねぇちゃん、」
「ん?」
「ありがとっ」
「・・え、」

それは、以前のことに対するお礼だとすぐに分かったが、虧の心はなんだか温かく、むずむずと嬉しさで震えた。

「どういたしまして!」
「えへへ」

「虧、この少女に心配をかけたんだからな。よく謝っておくように。」
「え、・・そうだったんだ。ごめんね」
「ううん。大丈夫!」

女の子を助けた後に気を失った虧は知らなかったことだが、彼女は必至に倒れた虧に声をかけ続けていたと燭が口にした。

「おねぇちゃん、手繋いで?」

「いいよ」

そう言って、女の子の手をきゅっと握った。

「せんせい!」
「・・・、」

無邪気な子供のなせる技か、彼女は微笑みながら燭にも手を伸ばした。

「燭先生、」
「・・ああ、」

少し困ったようだったが、燭も少女の手をとった。

「へへ」

虧と燭に挟まれ手を繋いで歩く少女は、頬を赤く染めながら嬉しそうに研案塔を歩いた。

「燭先生、アレやってあげましょう!」
「あれ?」

虧の発言に訳が分からないと眉間にシワを寄せた燭だが、クイクイと少女の手を上に少しだけ持ち上げる虧を見て、何をやりたいのか理解した燭は「ああ、分かった」と虧に返事を返した。

「それじゃあっ、えいい〜!」
「わーーッ!きゃあああ」

フワッと体を浮かされ、女の子はきゃあと叫びながらも心の底から楽しそうに笑っていた。


少女と手を繋ぎ、歩きながら彼女をフワフワッと持ち上げ笑い合う3人の姿は、まるで家族のようだ。と研案塔でそれを見た人達は皆思った。



指の間から射し込む光を食べて






mae | tugi



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