私の左腕はなくなった。
町も、家族もなくなった。
それはすべて私のせい・・。
何度呪っても、自分は消えることができない。
今日も、病室にあるベッドの上から空を見上げる。
それしかやることがない。
それしかやりたいことがない。
「・・・」
本当言うと、起きていたくもないのだけれど・・。
「虧」
「・・、」
首を動かし、名前を呼ばれた方を振り向く。
そこにはピンク色の髪の毛をきっちりと整えた男が立っている。
確か、私の担当を任されているらしい「燭」という人物だ。
「診察の時間だ」
「・・・」
特に返事を返す義理もない。
黙って燭の方へ体も向ける… 大人しくしていればすぐに終わる。
「終わりだ。」
「・・」
「そら、か」
「・・・」
私の見ていた景色に燭も目を向けた。
「少しずつでいい」
そう言って、燭は私の右手をそっと握ってから部屋を出て行った。
「これ・・、」
前にも感じたことがある・・?
手に残るあたたかいモノを確認しながら、燭の出て行った方を見た。
「・・明るい、」
あの人に触れられると、何故かあたたかくなる。
私は、あの人に・・いつも私をあたたかくしてくれる燭という人に、なにか返せるのだろうか・・。
暗い場所に射す灯りのように私の心を照らしてくれる人を・・。
壊れるものがない世界に
mae | tugi