「今日はよろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。」

虧は今日、1人で燭の元に来ている。
これから、燭と共に面倒臭くてたまらないZの円卓に向かうのだ。

今回は、嬉しいことに平門からの要請で、燭の付き添いを任された。
今までだって燭は1人で円卓に向かっていた。それを今になってどういう風の吹きまわしかと当初は怪しんでいたが、虧にとってとても大切な人物である燭と共に行動できるのは嬉しいことなので、黙っていることにした。


「それでは行きますか。」
「ああ。」



●○●

≪何故自由を許しているのか、甚だ疑問に感じますがなぁ≫
「それにつきましては私からご説明を」
≪燭君、いいだろう 説明したまえ≫
「有難うございます。」

律儀に言葉を返す燭。
その横に虧は大人しく座っている。

そして、虧と少し空間の離れた場所には平門、朔となっている。

「まず、无に自由を与えている現状の根底にありますのは、无の形成に使われたと見られる「ニジ」という動物の生態にあります。ニジは擬態能力があり発見が難しく、過去確認された個体数・生息地ともに極めて限られている。保護観察生物です。この生物に対して先人による書簡が僅かに残っておりますが、保護に成功し、調査のために飼育を試みたところ、衰弱・死亡させるという度重なる失敗に終わっています。」

それから、長い間燭は无、もといニジについての説明を円卓で行っていた。
初め、何故虧がここに呼ばれたのか疑問に思う点がいくつかあったが、これが答えなのかと納得した。

虧はこれまでほぼ壱組に在籍し、无についてなにも知らないも同然だった。
だからこうして、これから自分が守っていかなければならない存在の詳細を知る機会を用意された。ということだ。

「(无くんは耳がいいとか聞いてたけど、そういう生態系?で産まれてきたのか・・)」

極度のストレス、閉鎖空間に置いておくと无は弱まる。
无のカラダが衰弱してしまえば、これからの輪の計画も丸潰れになる恐れがあるということか・・。
まあ、燭先生が无をかばう理由はもっと違う優しく温かなモノだろうと思うのだけれど…。



「研案塔と輪では、无に対する目的が違います。」

「(ほらね)」

虧は、平門の言葉に心の中で言葉を返した。

「輪にとって、ヴァルガを輪へ出向かせる為の謎めいた踊り子。ヴァルガとの接触、それに伴う危険性も我々が无に課した”役目”とご理解下さい。奪われて生じる不利益をご心配と推察いたしますが、そうなる時は―― この手で殺します」









mae | tugi



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