「虧、起きろ!虧!」
「・・・ん、ん?」
体を揺すられた刺激で虧は薄めを開けた。
「うわッ!!! 燭先生!!?」
目を開けてみれば、視界いっぱいに燭の整った顔があった。
「いっつつ・・、アレ・・・・私」
「脳に異常はないようだな。軽い打撲か・・」
「へ、ああ…」
改めて燭に体をしっかりと触られる。
応急の診察だと分かっていても少し胸が跳ねた。
「それより・・燭先生、ごめんなさい。」
「何を謝る事がある」
「だって… 私、燭先生を守らなきゃいけないのに・・結局迷惑をかけてしまって」
しゅん・・と頭を下げる虧に、いつもの調子で燭は「散々迷惑はかけられている。何を今更」と返した。
言い方はキツイが、燭が虧を気遣っていることは見て取れた。
「はあ〜・・最近、私ヘマ多いな・・・
キイチちゃんのお説教部屋が見えてきた・・」
「遠い目をするな」
「・・はい」
燭にぽんと頭を叩かれ、虧は頷いた。
「それより、ここ・・どこなんですかね?」
「さあな」
確か、森の中で能力体のようなモノに襲われた時は、最終的に黒い池の様な物体の中に呑みこまれたはずだ・・。
それなのに、今虧達がいつ所は屋外。しかも、薔薇やたくさんの花々が咲き乱れる花園であった。
「も、もしかして・・」
「なんだ?」
「ここが天国!?」
「縁起の悪いことを言うな」
「・・はい」
燭にピシャリ!と返されて、虧は小さくなった。
「だが、あの能力体によって此処へ連れてこられたのならば、調査をする価値はあるな」
そう言って立ちあがった燭に続き、虧も重い腰を上げた。
「なら、私はちょっと空を飛んでみます」
「ああ。そうしてくれ」
燭に「行ってきます!」と声をかけ、虧は空へ飛んだ。
「・・・。ホントに何もないな・・・・」
上から辺りを見回している虧だったが、それらしい怪しい建物も、人も、町もなにも見えなかった。
本当に、ただただ綺麗な花園が続くばかりだ・・。
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