「虧ちゃ〜〜ん!もうすぐパレードだよ!早く!」
「分かってる!・・あ」
「!!」
與儀に叫ばれ、めんどくさいという言葉を飲み込みつつ部屋を出る。
出た直後、見事に白髪の少年と鉢合わせしてしまった。
・・確か・・・・・
「・・无、くん」
「う、うん!」
いささか緊張している風に見える无を、虧はまじまじと見た。
「虧ちゃん!そんなに凝視したら无ちゃんに穴が開いちゃうよッ!」
「與儀、それは言葉のアヤ、だから」
「ツクモちゃん・・でも!」
「ツクモちゃんも久しぶり」
「久しぶり、元気だった?」
「うん!ツクモちゃんもお疲れさま」
「うん」
軽くツクモと会話を交わすと、與儀に抱きしめられている无に視線を戻した。
「无くん達がココに来てから全く会わなかったから変だと思うかもしれないけど、私はこれで貳號艇闘員なの。名前は虧。よろしくね」
「虧・・、よろしく」
この子は、一週間ほど前の戦いで花礫の家族を無残に私と平門が殺したのを間近で見ていた。どことなく距離を置いているのは、そんなこともあって警戒をしているからなのかもしれない。
「うわああ、やっぱり人凄いな・・」
虧は渡されたイカレ帽子屋をイメージした衣装を着てパレードに参加していた。
こういった輪の開催する模様しモノに参加するのも久しぶりだったため、目がチカチカした。
「ちょっといいですかあ!?」
そんなこんなで虧もそれなりにショーを楽しんでいると、いきなり機嫌のすこぶる悪そうなキイチに声をかけられた。
「キイチちゃんどうも〜」
「虧さん!今日はそんな呑気なこと言ってる場合ではありませんよお!」
「なにかあった?」
「メンテナンス中のウチの高性能兎が間違いで迷い込みましたっ 捜させてあげますうっ」
「捜させてあげますって」
キイチの言い方に笑っていると、さらに虧は怒られたのだった。
「じゃあ、ここに居る與儀も連れて行こっか」
「ええーー!?俺今忙し「治安部じゃ兎の運動神経に追い付けないですしっ 壱組はキイチ以外動けないんですうっ」
「だって、ホラ行こうよ與儀」
「うう〜ん」
「とりあえず、私はメカニックとして先に上行って探してみるよ!」
「お願いしますうっ」
●○●
「虧さん!」
「虧ちゃーーーん!」
「キイチちゃん、與儀」
「見つかった?」
「ダメ・・なかなか相手は手ごわいみたい」
先に空を飛び、兎の捜索開始していた虧だったが、依然兎は見つかる気配がなかった。
「耳に赤いタグのついた兎ですよ!?ちゃんと捜してますかあ!?」
「捜してるでショ!?」
「キイチと同じトップランクでありながら日頃の失敗の数々!疑いたくもなりますっ」
キイチはよく與儀に攻撃的な発言をする。
キイチは若いながらもキッチリと仕事をするタイプで、仕事とプライベートもハッキリ分けて戦いも行うタイプだと虧は思っていたし、それは間違いではないと思っている。
だからこそ、與儀のように優しさで戦闘にも迷いが生じてしまうタイプの人間には甘さを感じて嫌なのかもしれない。
「ランク、ランクってさあ〜 そんな入團試験での通過点今もう関係ないでしょ…」
「大アリです!!貴方が下手を打てば同点のキイチまで同じに見られます!!大体なんです!?いつも相手に同情して躊躇ったり、本気出さなかったり!!」
「ま、そこはキイチちゃんに同感だね。與儀、アンタ力あるんだから・・戦いになったらそういう優しさは捨てていけるようになりな。じゃなきゃ、守れるものも失うことになるよ」
「全く!虧さんの言うとおりですう!目の前の個人にいちいち足を止めていたら、その先の大勢は守れません!!」
「・・・・・」
與儀は、虧とキイチの言葉に複雑な表情を浮かべていた。
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