私はここで生まれた・・。
そう、ここで・・・
−生み出す豪鉄≪ロイロンド≫
そこまで大きい規模ではないこの町では、数多くの機械が生み出され、収入を得ていた。
そして、この町で育った私もまた、機械を作り出すことに生きがいを感じていた・・。
しかし、
その時は来てしまった。
「(ここで、)」
平門に暇を出された虧は、久し振りに自身の出身地に来ていた。
「どこに家があったのか、どこに、なにが・・」
ヴァルガに襲われたあの日から、何年経ったのだろうか・・、もうこの地にそれまでの面影はなく、木と草が生い茂り、その当時は見たこともなかった動物が巣くう場所となっていた。
「色々、忘れてるな・・。」
虧は自身の顔に手を当てた。
「(忘れてはいけないのに・・)」
−ピピッ、
「ん?・・平門さん?」
しばらくその場に立っていた虧だったが、ポケットに入れたままだった携帯の音に反応し、通話ボタンを押した。
「はい虧です」
≪虧か、任務をお願いしたいんだが・・≫
「なんですか?」
≪お前のいる場所からすぐ西に降りた位置にある町にヴァルガらしきモノが出たらしい。こちらからも応援を向かわせるが、先に行ってくれるか≫
「了解!」
通話ボタンを切るとともに、虧は地を蹴った。
「(間に合えッ!!)」
心の中で何度もそう念じながら、虧は急いだ。
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