「ん?羊さん?」
≪喰、虧、與儀が見つかったメェ≫
「ホント?どこ?案内して」
羊に案内された先は、ぽっかり穴の開いた天上の下だった。
空気清浄の為に設置してある木の葉を模した機械の集まりが一部だけ見事に開いていた。
「天上裏ね、この中で暴れられると厄介だ・・とにかく僕が先に上に行って、與儀君引っ張ってくるから。出てきたところお願いね」
「分かった。でも・・ライン破損させたら許さないからね」
「はいはい。メカニックさんん!」
「喰ッ!!?」
さあ作戦開始だ!という時だった、引きずり出すより先に與儀が自分から下へ降りてきた。
そして・・その足場となったのが喰の顔面だった・・・。
喰の事をあーだこーだ言って嫌う虧も、この時ばかりは喰を心配した。
「ああ、でもッ!!待ちなさい與儀!喰、アンタしばらく寝てな!」
そう言い残し、虧は與儀を追うために走り出した。
●○●
與儀は一国の王子となる存在だった。
しかし、與儀の住んでいた土地、環境柄彼等は狙われ、與儀は能力者の実験とされ、”進化”をとげたというのだ。
今、與儀の住んでいた国はもうない。
跡形もなく・・。
虧は與儀を捜しながら考えていた。
本当なら、自分が一番與儀の理解者になれるのではないかと・・。
しかし、それは與儀が”あの時”の事実をありのまま受け入れる心の強さを持つ必要がある。
「(きっと、それは・・もう少し先なんだろうな・・・)」
そして、與儀の隣には自分だけでなく、无や花礫、ツクモ、喰、キイチ、みんなの存在が彼に大きな力をくれるんだと信じていた。
「そんなことより・・まずはあの銀髪をどうにかしないと!!」
「與儀!!」
「无くんの声…?」
廊下を無作為に走っていると、近くから无の声が聞こえてきた。
「无くん!・・みんな!」
「虧ちゃん!」
そこには、ツクモと花礫もいた。
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