與儀達は花礫がこれから一般社会に戻り、長い間輪には戻ってこないと思っているようだが、そんなことはなく、花礫は正式に入團するために専門の学校に入学するのだ。
「ッハハ」
「なに笑ってんのよ!」
デッキから、泣きながら花礫を見送る與儀や无を見て平門は大笑いをしている。
それもこれも、與儀達の勘違いは平門がハッキリと花礫の艇を降りる理由を言わずにいたせいだ。
「イヴァさん、平門さんの性格の歪みは今に始まったことじゃないですからね〜」
「それもそうね・・」
肩をすくめて言う虧に対し、イヴァも頷いた。
「あれですよね?平門さんが花礫君構うのって、あの沈んだ船に乗ってたからでしょ?」
「そうだな…」
デッキに共にいる喰の言葉に、平門が肯定の返事を返した。
「あれを沈めるのには俺と朔も参加していた。そこから運良く世に紛れた花礫と、街で偶然出会いここまで引き連れてきた无。物事がおかしな絡み方をするものだから、无の行動すべてが必然をたぐり寄せる為のきっかけに思えてしまう程だ。」
「今回、煙の館の件もまあ当たりだった訳ですしね。
どう思います?黒白をはじめ奴等の消息・・あの日、あいつ等の最後ってどんなだったんです?」
「あ、確かに・・知らない」
喰の言葉に虧も頷いた。
「最後?意気揚々と消えて行ったわよ」
ギリギリのところまで白黒を追い詰めた輪だったが、結局、彼は大きな光を発し逃げ出したというのだ。
「みんな消えました!フザけんなっ」
「僕、自分の目の前の敵は全部殺り終わってましたよ」
「何よアンタ!! 自分凄いって言いたいの!?」
「イタッ!イテェッ!」
そんなことがあったのか。と改めて虧は眉を潜めた。
横では喰がイヴァにボコボコにされているが、そんなの気にもならなかった。
「虧、お前もよくやったな」
「そうですか?」
「あの技も大分力を付けたようじゃないか」
「まあ、トレーニングしてますからね」
「あれだよね、」
「喰復活早!」
「虧のあの技がもっと進化すれば、與儀君に力を借りる機会も格段に減るだろうね」
「まあね・・」
「でも、焦らなくていいのよ虧、」
イヴァの優しい言葉に虧は素直に頷いた。
それでも、自分がもっと力を付けた方がいいという自負はあった。
「それにしても、静かだな。あの日から小気味いいくらいヴァルガ被害の報告件数がぱたりと止んでいる」
「「「……」」」
「嵐の前の爽快な空気と言っておこうか」
「火不火の奴等、きっとネチネチと次の準備してるんでしょ、僕等もその間に色々整えさせてもらうって事で」
「そうだね。じゃあ、私はこれで」
「僕も行くよ」
平門、イヴァを残し、喰と虧は先にデッキを降りた。
17:静寂
mae | tugi