「嘉禄って、誰なの?」
燭に虧は詰め寄った。
「ああ、・・以前も无の脳波が乱れた時に、无の頭の中に語りかけてきたらしい人物だ。」
「でも、あれで・・あれが始まりで交信が始まるなんて、性格悪いんじゃ…」
「ああ、そうだな。」
「・・・」
「とにかく、无の側を離れるな。頼んだぞ」
「分かりました。」
燭に肩をたたかれた虧は、燭の歩く後ろ姿を見る為振り返りつつ、无の眠っている部屋へ急いだ。
「ツクモちゃん…っ 俺、「けむりのやかた」に行く…!嘉禄がっ… 嘉禄が殺されちゃう…っ」
「无くん?」
虧が无の部屋に着くと、无は目覚めていて、当の无はツクモに抱きついて必死に何かを訴えていた。
「虧、」
「无くんどうしたの?!」
「虧ちゃん!俺っ、俺…!けむりのやかたにっ!!」
「けむりのやかた・・?」
●○●
「その場所は難しいのう そこは火不火との関係を疑い、過去に政府が組み込んだものの、証拠を上げられなかった企業の所有地じゃ。その時の負い目でそう簡単に潜入の許可は下りん。次に失敗したら二度と手が出せなくなるからの。」
无の行きたがっている「けむりのやかた」とは、そういった場所らしい。
療師の表情は硬い。
「お、俺行く…!きぎょうの人とお話してくる…!「君が行って何が出来るの?」
「喰、」
「喰くん!」
「それで无くんまで取られたら笑えないし。今の話だけど、確かな情報や証拠がなければ執政塔はOK出さないよ。无君の夢1つで危険を侵せる相手じゃないし。要するに、輪の行動許可は下りないって事」
「確かに。喰の言うとおりだね。」
仕事を終えた喰は、部屋に入ってくるなりごもっともな意見を話ながら虧の横に座った。
「俺行く!だって… 嘉禄が殺されちゃうから すぐ来てって…」
无はそれでもなお反抗した。
嘉禄という人物に対して虧は良い印象を受けていなかった。
でも・・・
「无くんがそこまで言うなら、」
「虧?」
「私は、1人でも多くの人をヴァルガとか、火不火から守りたいって輪に入った。」
「虧ちゃん?」
「正直、嘉禄って人のことなんて分からないけど、无くんがここまで必死に訴えてるんだから、」
「虧ちゃん・・っ」
「うん!」
虧の言葉にハッと視線を持ってきた无に対し、虧は笑顔を向けた。
「しょうがないな…」
「平門サン・・・!」
「・・!」
「いいだろう。責任は俺が取る。嘉禄救出の名目のもと対象を襲うぞ。輪としての勝負だ!」
14:悪夢
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