「與儀!ツクモ!虧!」
≪メェ、≫
「・・ん?羊さんどうした?」
≪虧、无ガ≫
「え?」
ヴァントナームでの買い物の日から数日経ったある日・・。
貳號艇は騒がしくなった。
「无くん!!」
「(无くんが倒れた!?なんで!?)」
以前、无が倒れた時にはその場にいなかった虧は、冷や汗を流しながら貳號艇の廊下を走った。
「やはり、脳波が乱れておるが、時間が経つと共に脳の活性箇所が一部に集中してきておるの」
「无くん・・」
「大丈夫じゃよ、虧」
「・・はい。」
「嘉禄が无になにかしてるわけ!? つうか… この場にいねえのに他人になんか出来るとかあんの!?」
「嘉禄…?」
「无は人の形で命を紡いでおるが、人間として生まれておらぬ。この世の数限りない生命が持つ能力で我々人間が知り得たものはまだ僅かじゃ」
无の様子を見に来てくれている療師の説明を大人しく聞いている花礫、ツクモ、與儀、虧。
无はそれでも今もなお苦しんでいる。
「そして无が現在受けている何かも――― 我々の医療器機では捕えられぬようじゃ。だが、その何かの存在を无がこうして身体に表しておる。細胞1つにでもその痕跡を残してってくれるといいんじゃがの。我々は未知の存在を感じた時、それが残した影をひとつひとつ踏み、追いかけるしかないのでの。」
●○●
苦しむ无をのせ、彼等は研案塔に向かった。
「運ばれた无に今ついているのは療師か!?」
「ハイ!燭先生…っ」
「ならいい!」
无が運ばれたのと同時に、研案塔も騒がしくなった。
「燭先生!」
「・・虧、お前も来ていたのか。无の様子はよく見ておけ。何かあればすぐに知らせろ」
「はい。……、」
「心配するな。療師もついているだろう。」
「そう、ですよね・・。」
「无はな、以前にも同じような症状が出たんだ。」
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