「キリ!? キ…」
「キリ…!!!」
ムラノの呼びかけ虚しく、キリは空中で姿を消した。
「能力体化したものは巨大エネルギーを生みだす急激な新陳代謝を補うため、他者を喰らい、その細胞を直接己へ融合させる事で生きています。」
消えたキリの為に行き場を無くしたムラノの体を、キイチが支えた。
「ヴィントで発見された死体は1つも喰らった痕がありませんでした。キリの命はもう・・空洞だったのです。」
「バンシー、」
バンシーは頷くと、先に朔の元へと戻っていった。
●○●
「で?ムラノさんは誰から薬買ったって?」
「それがですねー、燭先生の部下って証明を提示してきたらしいですよ」
「なにそれ!? 燭先生が悪いみたいな展開には絶対させないからね!」
「まあまあ、燭先生に限ってそんな展開にはならないから、な」
「グウぅぅ…」
虧は腑に落ちない表情を浮かべた。
それを見て、面白そうに朔が虧の頭をなでた。
「さて、帰るぞ!俺とキイチはムラノを連れて行く。无と花礫は與儀に任せて糺にここの処理をしてもらう。」
「朔さん、僕と虧はいいの?」
「ああ、お前らは――」
「「ええ!?」」
「あらあら」
朔の言葉に、今日一番の声を喰と虧は上げた。
それを見て、キイチはニヤニヤと笑っていた。
●○●
ジ、ジジ・・・
≪メェ?≫
バンッ!!
と勢いのいい音が貳組の入り口に響くと、それと同時に喰と虧が一緒に姿を現した。
「え…?あれ〜〜
喰くん!? どうしたの?」
「朔さんからの命令でね。しばらく貳組にお邪魔して、无君達と一緒にいるよう言われて来たんだ。よろしく」
「ほんっと!最悪!」
ペッと吐き捨てるように言い放った虧の肩に手を置く喰の顔はとてつもなくイイ笑顔だった。
11:古湖
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