「で、どうしたの?」
虧は、部屋の隅に置いてある椅子を引っ張ると、花礫に座る様促した。
「……」
「もしかして、朔さん?」
「…ああ、」
やっと花礫は虧に返事を返した。
「アンタと話してこいって」
「ああ…って言われてもなあ、何をどう話すの?」
朔という人物は時におせっかいが出てくるような気がする。
今回のこの件だって、もしかしたら朔が花礫に虧は本当は良いヤツだから〜とかなんとか言ったのかもしれない。
それなら、それでこの部屋に来た花礫も花礫で実は凄く素直で優しい子なのかもしれない。と虧は思った。
「アンタ、だよな。ヨタカ殺ったの」
「そうだね。」
「前も言ったよね。謝る気は全くないって…。」
「分かってる。輪にも今は完全にヴァルガ化したヤツを助けることはできねえんだろ。與儀からも聞いた。」
「そう。」
なら、分かっているなら、別にここに来る必要性なんてないのではないか?
特に仲好くしなくてはいけない理由もないのだから・・。
「アイツ、朔が言ってた」
「何を?」
「お前の話を聞いて来いって」
「だからな・・それが何なのか・・・」
花礫の目を見る。
家族を殺され、それもヴァルガ化が原因だ。
朔が私に花礫に対して言わせたいこと…それは分かっていた。
「輪に入團している人はね、元々反政府組織に対抗するために協力したいと思っている人もいれば、不可抗力、そうするしか方法がなかった者が入る場合もある。」
「……」
「私はその後者の方なの」
これも成り行きだ。
これで花礫に何か変化があるのか、それが良い展開を導くのか分からない。
だが、こうなったら話してみてもいいかもしれないと虧は口を開いた。
●○●
虧の出身地は、比較的小さな規模の工業製品を製作する技術が発展している町だ。
ここで作った機械を、大きな街に売り出し、生計を維持するというのが一般的な生活スタイルであり、虧もあたり前のようにそれに続いた。
そして、もともと何かを作り出すことが好きだった虧はメキメキと頭角を現し、数多くのハイテク機械を生みだすことに成功した。
両親も、町の仲間も喜んでいた。
なにより、虧も自分の好きな事で家族を助けられ、周りの人々も喜んでくれることが嬉しくてたまらなかった。
しかし、虧が16歳の時、この平和な町に悲劇が起こった。
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