「お・・はよーございます・・・」
ソロォ〜っと食事をする部屋に続く扉を開けた虧。
そこにはすでに起きて支度をし終えた燭がいる。
「早く食事を済ませておけ、今日も仕事はたくさんあるんだぞ」
「あ、・・はい」
虧は、昨日の夜のことを考えるとどうも不思議でならなかった。
なんであんなことを燭はしたのか。そして、こうもケロッと何事もなかったように自分に接してくる。第一、あの時のことなど忘れたように顔を合わせてから仕事の話しかしないのだ。
「あの、燭先生?」
「なんだ?」
「昨日・・」
「まだ研案塔でのことを気にしているのか」
「あえ、いや・・やっぱりなんでもないです。」
「そうか。」
虧が黙ると、燭も相槌をうつだけで口を開かなくなった。
「それよりも、早く食べきらんと置いていくぞ」
「!それは嫌です!食べます!!」
燭の言葉に虧は目の前にある食事を口に押し込んだ。
「(考えても仕方ないし・・)」
○●○
「それでは、今日の内容だが・・」
研案塔に着いてからも虧は心ここにあらずだ。
「おい・・聞いているのか!」
「え、」
「虧、」
「おわああああッ!!!」
ハッと思考を正常に戻そうとすれば目の前に燭の整った顔が見え、虧は叫びながら後ろに下がった。
「・・お前は、」
「ああああ!!あのごめんなさい燭先生ッ!!違うんです!コレは・・」
「分かったからまず落ち着け。」
「はっ・・!はいっ!!!」
「深呼吸のやり方は知っているか?」
「しっ!失礼な!そのくらい知ってますよ!!」
意地悪に笑う燭に言い返しつつ虧は深い呼吸を繰り返した。
「どうだ?」
「・・はい。落ち着きました・・!」
「なら、メカニックの仕事を頼むぞ」
「はい!!」
改めて燭に返事を返し、虧は部屋を後にした。
「ん?虧じゃん」
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