「『常に表立って行動せず弱者を嬲るのがお好みの臆病者』と、壱組の追跡者リストにあったぞ。思いがけず強く育ったペットが與儀を負傷させ、浮かれて調子に乗り逃げ出すタイミングを見失ったか?」
平門の一撃により、顔面をえぐられたヴァルガを虧も平門と共に追っていた。
「平門さん」
「ああ、」
「甚振るのは楽しいからな・・起動」
平門が常に頭にのせているシルクハットを合図と共に、ヴァルガに向けて投げる。
と共に、シルクハットは可憐な女性の集団と化した。
「お前のお嬢ちゃん達はいいねえ。良く使い込まれている。繋縛完了だな。」
平門のシルクハットから現れた女達がヴァルガを抑え込んでいると、空から朔が現れた。
「朔」
「朔さん、ちょっと遅くないですか?」
「まあまあ、それよりも、ご協力感謝を申し上げる 貳號艇長平門殿」
「……、くだらない言葉の羅列だな。終了」
また、平門の合図で女はシルクハットに戻る。
「礼言ってんだぜ?ひでーな」
平門の言葉に、朔は苦笑いを返していた。
「虧、」
「はい?」
デコボコな2人の様子を見ていた虧だったが、このタイミングで声をかけられるとは思っていなかったたえめ、少しばかり驚いた。
「お前は先に與儀達の所へ行ってくれ。」
「とりあえず、その後は壱號艇に戻っていいぞ。お疲れさん虧」
「分かりました。お疲れ様です平門さん。朔さん、また後で」
「じゃあな!」
「ああ。」
業務的な返事を返すと、虧は空を飛んだ。
しばらくして、スッと地に足をつける。
「・・虧ちゃん」
「久しぶり。與儀、」
「虧ちゃん、あの・・」
「何を言いたいのか分からないわけじゃない。でもね、あそこでヴァルガ化した少年を殺さなかったら、…そこの女の子は助かったの?」
「…それは、」
「私たちに完全にヴァルガ化したモノを助ける術はない。」
「・・・」
「貴方ね、花礫っていうのは」
「…なんだよ」
「いえ。酷いと思うならそれでいいけど、謝ったりしないから。」
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