アイドルってのも楽じゃない。
仕事の時間、就寝時間、はたまた食事の時間さえ適当。もちろん悪い意味で。
なりたくてなったアイドルだけど、さすがにキツイ……。
しかも、ある一定のキャラが決まってしまってる場合、また面倒で……。
ドSの申し子だとか、ドS女王なんて肩書きはっつけられた私は、アイドルというよりは、質のいい芸人みたいに扱われてる。
お笑い芸人の尻を蹴ったり、先輩アイドルを罵倒してみたり。まあ、もともとSかMかで言えばSだし、泣きたいほど辛いわけじゃない。
しかしまあ、ここまでドS要素ばっか求められても……と、思うわけで…。
日向先生………、未だに先生呼びが抜けないな…。に相談とかもしたけど、駆け出しのうちはまあそんなもんだ。って、言われた。
そんなわけで、今日の仕事も疲れた…。
今日の仕事相手は、早乙女学園に通ってた頃のクラスメイトのトキヤだった。
トキヤとはなんやかんやで気が合うからいいんだけど、トキヤにもなんかドS行為をしろ!なんてなに考えてんだ、番組プロデュ−サ−!!!
「…………はあ、……ま、トキヤは機転きくからいいけどね。」
目の前にはシャイニング早乙女事務所所属タレント用の寮。あとちょっと頑張ればベッドにダイブできる!!頑張れ私!!
そう心の中で叫んでいると、近くの花壇の陰から私を呼ぶ声がした。
「…………真琴ちゃん、真琴ちゃん、」
「………あ?」
ひょこっと顔を出したのは、私たちより少し早くアイドルとして活動を始めていたトキヤのお兄さんHAYATOだった。
「真琴ちゃんっ、お願い!かくまって!」
「………は?」
トキヤのとこ行きなよ。って言ってHAYATOをスル−してやると、なんかグズグズ鼻をすすりながらHAYATOは私の後をついてきた。
「なんなの!?」
「っ、……だから、かくまって、ほしい……にゃ」
勢いよくHAYATOの方を振り返って声をあげると、HAYATOはビクッ!!と肩を震わせた。泣いてるし……。
「なんで?」
「それは、……言えない。」
「…………はあ、」
HAYATOに向かって、大袈裟にため息をついてやる。
かくまってほしいけど理由は言いたくない。
トキヤのところに行けば、HAYATOが理由を言いたくなかろうがトキヤはどんな手を使ってでも理由をはかせるだろう。
「頼るとこ他にもあるでしょ、」
「やっ、ヤダ!!真琴ちゃんがいい!!」
「HAYATOが私に執着する意味が分からない。」
「分かんなくていいから!!ねっ!お願い!」
コイツ………、図々しくも私の部屋の前まで着いて来やがった。
「だから!いい加減にっ!!」
ガチャッ
「……!!」
「―――うわっ!!」
――――――…パタン。
「あ−も−」
意味が分からない!ホントなんなの!
近くの部屋の扉が開く音がした直後、HAYATOはなにを考えてるんだか私ごと部屋にダイブした。
床に直撃した腰が痛い……。おのれHAYATO!!
ピンポ−ンとインタ−フォンが鳴る。
HAYATOはあわあわしながら部屋の奥へ走っていった。
またインタ−フォンが鳴る。
…………誰だよ。
未だに痛む腰をさすりながら私は扉をあける。
「こんばんは。」
「トキヤ……?こんばんは。」
「(トキヤ!?なんでっ!!?)」
私はトキヤに気づかれないように部屋の奥に視線をうつし、小さくため息をついた。
★★★