「泣きましょう。真琴先輩、」
「………でも……、」
「先輩はもう十分頑張ったじゃないですか。先輩、遅れちゃってごめんなさい。」
私は音くんの言ってることがいまいち分からなくて首をかしげる。
「その日に俺たちが一緒にいれなくて。大丈夫ですって言ってあげられなくて。……先輩は、こうやって俺を見つけてくれたのに。」
「……それは、」
当たり前のことだよ。
だって、音くんはまだその時中学生で、トキヤくんだって見たこともなかったんだから。
それなのに、音くんはごめんなさいって何回も私に言う。
「泣いちゃいましょう。一緒に、会長の胸で!!」
「結局私なんですか……。」
ばあっ!!と笑顔で言う音くんとは逆に、ため息をつくトキヤくん。
「………いいですよ。2人とも、仕方がありませんから、私の胸をお貸ししましょう。」
ほら。とトキヤくんに言われ、音くんも頷く。
私は一瞬にしてあの日にタイムトリップした………。
悔しかった
悲しかった
寂しかった
泣きたかった
でも、
泣けなかった
泣かなかった。
ケジメをつけたくなかったから。
レンを好きな気持ちを捨てきれなかった私のワガママ。弱い私の最後のワガママ。
さあ、
この思いにケジメをつけよう。
いいよね、………もう。
泣いても、
いいよね。
そう私に問いかけるあの日の私に、私は笑顔で頷いた。
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