この関係を終わらせたくて嘘をついた。
「付き合うことになったんだ、先輩と」
最初は先輩が好きだった。でも今思えばそれは憧れという感情の方が強かったかもしれない。いつの間にか先輩といるよりも団蔵との時間が増えていっていけないと分かっていながら体を重ねた。痛くて団蔵の背中に爪をたててしまい謝ると優しく笑って“大丈夫、いいよ爪たてて”背中に赤い線が残り見るたび痛々しそうだった。
そんなちっぽけな優しさと団蔵の口から出る嘘か真か分からないような甘い言葉。
情事中には何回も好きだだとか愛してるだとか吐き出される言葉に胸が高鳴りそのたびにこの偽りの関係でいることが怖くなってしまった。
団蔵にとって一時の遊びなのかもしれない。体だけの繋がりで本心はどう思っているのか俺には分からない。
だから終わりにしよう。
「幸せに、な」
いつもなら唇にするのに今日は額にキスをされた。
少し自惚れてもいいかもしれない、と思った。
こんな泣きそうな顔をしているやつにおめでとうなんて言われても祝福されてる気はしない。
「団蔵」
「なに?」
「ごめん、嘘」
「…は?どういうこと?」
「先輩と付き合ったの。あれ嘘」
「……はぁああ!?」
「だから」
露になっている腕にキスをした。