雨音を奏でる 続き
現代パラレル/年齢操作



「アニ、どうしたんだ…その顔」

「喧嘩売ってるつもり?」



ここ一週間まともに睡眠を取っていないせいか目の下に隈が出来ていた。ライナーは一言謝ると片目にかかる前髪をあげてまじまじと顔を覗き込んでくる。近い距離にライナーの顔面があるのはあまり気持ちはよくないけれど別にそこまで気になることではないので好きにさせる。

「綺麗な顔が台無しだぞ」
「…別に。私は気にならない」
「なんか悩みでもあるのか?」
「…ないよ」
「そうは見えないよ、アニ」

いつの間にか来ていたベルトルトが隣に並ぶ。二人とは家が近所にあるため昔からよく一緒にいた。所謂、幼馴染みというやつだ。幼稚園から高校まで一緒で奇跡的にクラスまで同じ。腐れ縁に近いかもしれない。

「俺らに隠し事なんて出来る訳ないだろ?」
「僕たちずっと一緒だったじゃないか、今更遠慮なんてしないでよ」

「………」


遠慮をする訳が無い。
ただこの原因を二人に知られたら面倒臭くなるのは目に見えているので静かに一人で考えていたかっただけだ。


「「アニ」」


二人は私の保護者か、エレンとミカサじゃあるまいし。フッと一瞬頭に浮かんだ“エレン”という名前にピクリと瞼が動いた。
1人で考えるのも限界か、と短いため息をつき覚悟を決めた。


「エレンから告白された」





―――――――――――――――――






「アルミン、助けて欲しい」


登校早々ミカサが悔しそうに顔を歪めて僕の本を奪った。あぁ、まだ栞挟んで無いのに、と頭の片隅で思ったが仕方ない。ミカサの周りの空気がどんよりと負のオーラを放ってる。

「一体どうしたの?」
「エレンが…エレンが……」
「あぁ、確かに最近ぼんやりしてることが多いね」
「あんなエレン見ていられない、だから、助けて欲しい」
「うん、でもそれとなく聞いてみても濁されたし…言いたくないんじゃないかなぁ?」
「ダメ、これ以上あの状態が続くとエレンは寝不足で意識が朦朧とし事故にあったりするかもしれない。それはとても危険、だからアルミン」


ミカサの迫力ある目力に迫られる。こうなった時のミカサは絶対に引かない。確かに最近のエレンはぼんやりとしていることが多いし、階段から落ちそうになったり電柱にぶつかりそうになったりしてミカサが本気で心配をしているのも分かる。もちろん僕だって気になっていた。あのジャンに絡まれても力なく「あぁ、」と返事をするだけで以前の覇気が全くといっていい程感じられない。一体どうしたというのか。ジャンも張り合いが無いのか最近はエレンにつっかからなくなってそれはそれで静かでいいのだけれど日常の一片が欠けてしまったような気がしてなんとなく物足りない。


ミカサに放課後二人だけで話をしてみるよと返すと少しホッとしたのか表情が和らいだ。そんな僕達をよそにエレンはぼーっと窓の外を眺めていた。無意識なのか何かを目で追っているような感じがする。静かに自席から離れエレンから少し距離をとって外を眺めると隣りのクラスがグラウンドに出ていた。

―ライナーとベルトルト…とアニがいるクラスだ。
―エレンは何を見てるんだ?


視線の先は恐らくその三人であることは間違いなさそうだが。意図がつかめない。考えられる可能性は…?

そういえば昨日の選択科目の授業でアニと会ったが彼女もいつもと様子が違うように感じた。違和感はすぐにわかった。隈だ。透き通るような白い肌にうっすらと目の下が暗くなっていたのだ。このことと何か関係が?

アニとエレン接点はある。
同じクラスにもなったりした仲だし、何よりあることがきっかけでエレンがアニに格闘技を教わったりしていたこともある。


仲は良い………
まさかエレンがアニを?
それは…無いとは言い切れない。が、なんとなく……複雑なような気がする。確かめるまで何とも言えないが。


エレンに声を掛け放課後、話があると言うと分かったとだけ返事をされた。僕が席に戻る頃には視線は窓の外へと移されていて同時にチャイムがなった。





おそらくエレンは恋をしている。
確信は無いが、僕は何故かそう思った。






――――――――――
続きます

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