▼現代/マルジャン同棲前提
「…はぁ」
今日は空の機嫌が悪いらしい。鼠色の空は今にも泣き出しそうだ。
マルコと喧嘩した。
それはとても些細なことだった。
つい感情的になってしまい財布も携帯も持たずに家を飛び出し行くアテも無くその場に座り込んだ。どうして俺は、すぐ頭に血が昇るんだ。短気は損気。まさにその通りである。
マルコとは1つしか歳が変わらないのにいつも冷静で優しくて、頼りになって…。いつだって俺の意見を聞いてくれて味方でいてくれる。そんなアイツが俺は好きで、好きで…だから恋人になれた時は死ぬほど嬉しくて。それなのに俺ときたらすぐに嫉妬してガキみたいに喚いて、マルコを困らせてばかりいる。こんなつもりじゃなかった。もっと大人にならなきゃと考えてはいるものの上手くいかない。
「…俺ばっかり、好きみたいだ」
じんわりと目頭か熱くなり慌てて手の甲で擦った。すると空がタイミングがはかったようにしとしとが雨が降り始めた。最悪だ。雨宿り出来るような場所も無く近くのコンビニを探そうと顔をあげるとビニール傘をさしたマルコが目の前に立っていた。
「風邪ひくよ」
「なんで…わかった?」
「分かるよ、ジャンのことは」
なんでもね。
ニコリとマルコが微笑む。
「………マルコ」
「ん?」
「さっきは言い過ぎた、…ゴメン」
「僕の方こそゴメンね」
「なんでマルコが謝るんだよ。悪いのは俺なのに」
「ジャンが怒る原因を作ったのは僕だから。だからゴメンね」
「…なんだそれ…」
「僕は、ジャンの嫌がることはしたくないんだ。君の笑顔を壊したくない」
「…マルコはいつもそう、俺を甘やかす」
「いいじゃない、可愛い子は甘やかしたくなるの」
「別に、可愛くねーし」
「何言ってるの。ジャンは可愛いよ」
「っ…」
本当マルコには敵わない。
恥ずかしさで顔を俯くと影が落ちる。
静かに額から唇が離れ抱き寄せられビニール傘が足下に転がった。
「ジャン…、好きだよ」
「…俺の方がマルコのこと好きだし」
「ふふ、ありがと。嬉しいよ」
そっと触れるだけのキスを交わすと雲間から少しだけ太陽が顔を覗かせた。