※現代/キャラ崩壊








校門をくぐり下駄箱で靴を履き替えているといつもより学内がざわついているように感じた。何かあったのだろうか、後で伝七あたりにでも聞いてみよう。どうせ大したことではないだろうと欠伸を噛み締めながら階段を上がると信じがたい光景が目の前に広がっていた。

「なんだ…、これ」

一体何があったんだ。
呆然と立ち尽くしているとドンッと肩に何かがぶつかった。

「ごめんっ…、あ、彦四郎か。おはよう」
「おはよう…これ何があったの?」
「わからない、朝来たら既にこの状態だったんだ」

クラスメイト兼幼なじみでもある一平は箒を片手にため息をついた。

「誰がこんなことするんだろうね?」
「………」


三年の教室の廊下側の窓ガラスが何者かの手によって破壊されていた。一枚や二枚ならともかく全てだ。校内に不審者が侵入した可能性も考えられるため学校側は警察に通報し、当然休校となった。試験も控えているというのに自宅待機することになり、教師達は対応に追われバタバタと学内を走り回っている。一体誰が、何の目的で。クラスメイトたちが口々に噂しあっている中、僕はある人物が頭に浮かんでいた。



「で、僕が例の事件の犯人だっていいたいのかい?」

「だったら面白いな、と思ったんだ」
「理解しがたいね」

「昨日、見たんだ」

「何を?」

昨日は教員の講習会があるため全校生徒に向けて朝のHRで授業が終わり次第例外無しの即下校となっていた。無論部活動も委員会活動も禁止。

「家の鍵を学校に忘れて取りに行った」
教室にあると思っていた自宅の鍵は下駄箱の下に落ちており急いで拾い出ようとすると視界にある生徒の靴がまだ残っていることに気づいた。

「それが僕の靴だったと?」

「いや、わからない」


その靴箱には名前も番号も書かれていなかった。ただ単に誰かが革靴を置いて運動靴をはいて帰っただけかもしれない。だけど僕は思ったのだ。もし、この事件の犯人が学年トップの成績を持ち生徒会長をも務める黒木庄左ヱ門だったら、


「仮に僕が犯人だとしたら君は、今福彦四郎くんはどう思うのかな?」

「普通なら学内に不審者が侵入した、もしくは素行が悪い生徒の悪戯と考えられるだろう。そんなのつまらないんだよ。だからいつもは生徒の味方であり、教師からの信頼も厚い君がこのような裏切り行為をしたら」

「愉快だと?」

「そうは言ってないだろ」

「顔に書いてある」

「あっそ」


別に犯人を突き止めたいわけではない。物語の主人公のような好奇心や行動力は僕には無い。登場人物紹介にさえでてこない脇役の男Bくらいが僕には適しているのだ。

「僕の主張を聞いてもらえたりはするかな?」

ニッコリと陰のある笑みを浮かべる。自然と出てしまった舌打ちは咳払いで誤魔化したがおそらく聞かれているだろう。

黒木は椅子から立ち上がるとつかつかと僕に歩み寄り真っ直ぐと目を見つめた。

「僕は君が犯人である方が面白いと思う」
ハッキリとした口調で目の前の男は言った。

「君のクラスメイトはまさか“あの”今福くんがこの事件の犯人な訳が無いと口を揃えて言うだろう。雑用ばかりの学級委員を引き受け、面倒なことは全て任されお人好しと呼ばれている、それに」

優しくて真面目な君が、こんなことをするはずがないと。

「本当に人を苛つかせることが得意だな、生徒会長さんは」

「気に障るような発言をした覚えはないが謝るよ。でもこれが君を第三者側からの見た姿だ。あくまで表向きの君のね」

「口を塞いでやりたいよ、今すぐに」

「それは歓迎だね」

「馬鹿、しね」

「彦四郎と二人でならいつ死んだって構わないよ僕は」


仮面が微笑むが僕から見える庄左ヱ門の表情は変わらず無だ。




「そろそろ茶番は終わりにしようか、彦四郎」

「お前から言い出したクセに」



コツンと触れた額、そして唇。
はらりと床に落ちた2枚の包帯が意味する答えとは。

解説的なもの

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