成長





いつからか自分でも分からない。
気づいたら目で追うようになっていて、サラサラと髪が風に靡くたびに見入ってしまったり、姿を見かけるだけで鼓動が早くなり…つまり、俺は……、


「ねえ、金吾」
「……………」
「金吾ったら!」
「っぅえ!?あぁ、ごめん!!」
「……」
「…?兵太夫?」
「ははーん」
「?」

兵太夫が口元をつりあげてニヤリと笑った。これは嫌な予感しかしない。

「今さあ、見てたよね?」
「えっ……な、何を…?」
「伝七」
「なっ、!!そ、そんなわけっ」
「わかりやすいねー金吾って」
「だから違うってば!」
「はいはい、わかったわかった」
「兵太夫!!」


否定することが無駄だということは分かっている。なぜか昔から兵太夫にだけは隠し事を見破られるのだ。


きっと鏡を見たら耳まで赤く染まっているに違いない。



まったく、兵太夫様には敵わないよ

―――――――






これだから単純バカは嫌なんだ。
薄々と感じていた。
馬鹿みたいに気づいてないフリをしてきたけど金吾の動揺っぷりを見れば誰だって感づく。

大体なんで、よりによって伝七なわけ?なんで僕の隣りにいるアイツを見てるんだ。おかしいよね。アイツの隣りには僕だっていたのになんで?馬鹿みたいに伝七の姿ばっかり目で追って、お前を見てる僕には全く気づかないなんて笑えないよね。金吾が伝七を見てるたびに僕は苦しくて悲しくて、ただ見てることしか出来なかった。それなりの努力はしてきたつもりだったけどある日伝七の視線の先の人物に気づいてしまい、その瞬間嫌でも分かった。



「………」
「伝七」
「………」
「オイコラへたれ」
「…えっ…あ、ごめん。呼んだ?」
「はあ……」
「な、なんだよ?」
「そんな気になる?体育委員長が」
「なっ…!!!何を馬鹿なことをいってるんだ!これだからアホのは組はっ!!」



真っ赤になった顔も、揺れる髪も、大きな目も。全部羨ましくて、もしも僕が伝七だったらよかったのにと思った。そしたら好きになってもらえたのに、って。

僕自身が受け入れてもらえないのならば、僕以外の、金吾の視線の先の誰かになりたかった。


「あのさあ」
「な、なんだよ兵太夫…」
「見てるだけじゃあなんも伝わらないと思うけど」
「…余計なお世話だ」



こんなにも僕に想われているのに全く気づきもしない金吾とすごい熱視線を送られているのに片思いだと思っている伝七に苛々しつつも僕は馬鹿みたいにアイツが好きで窒息してしまいそうな日々を送っている。




馬鹿馬鹿しいよ、ホント。
報われない恋なんてするもんじゃないね。



でも大切な人が幸せならそれは僕の幸せでもあるというわけで。仕方ないからそろそろこの想いを仕舞わないといけなくなってきたらしい。





――――――――





珍しく二人が一緒にいるところを見かけた。お互い真っ赤になっちゃって見てらんない。


うん、もう覚悟は出来た。



「好きだよ、ばーか」




最初で最後の告白。
じゃあね、これから僕は二人をくっつけることにしたからもう二度とこの気持ちが戻らぬようカミサマとやらに祈った。




―――――――――――
支部にあげたものをちょっと加筆

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